仇華ーあだちばなー

「ご息災かな?」

 

 なんて大見栄を切って、大物の様な語り口調で出張った、でしゃばった僕はここ大鋸御屋おがみやの主人にして家主のひじりさんだけれど見てみると、見てみれば、あらあらまぁまぁと言った状況でありありと心身共に差をを見せられていた憎たらしくも愛おしい妻と渦切の嫡男ちゃくなんの姿だった。

 

 あの妻のことだ、あの奥様ちゃんのことだ。

 この先の未来と将来を考えるが故、否、考えすぎたが故の強行だったのだろうけれど、どちらかというと愚行に近しい結果になった様だということは、あえて言い伝えなくても良いことなので伏せておこう。


 にしてもだ、これはまた可愛らしい大きな傷を床につけてくれちゃったものだけれど、そんなものは張り変えればいい話だ、僕なら、うん一板張り替えるならざっとした見積もり、いや見立てだけれど半年は掛かるだろうなぁ。


 そんなことはさておき。

 

「其処に伏せている奥様ちゃんなんだけれどさ、奥の小部屋に布団がある。ちょいと寝かせておいてくれはしないかい?

 僕もね、いや僕はねちょいと話をしたくってね。雑談に似た相談と言ったところだ。さ、頼めるかい?」


 おぉ、攝くんも、大きくなったね。体も纏う雰囲気もそして歪みも。

 「ありがとう攝坊。さてちょっと部屋を移そう。ここは"響く"から。」


 招いたのは事件いや事故現場になった張の本人、そう僕の寝室だ。

 膝をつかせて数分後。やっとこさ本題だね。


「攝坊、そして馬酔木さん。渦切の屋敷に連れて行ってほしい。というより丹兄に会わせておくれ。」


 そして僕はこう言うのさ。

 遅い夜、否、襲い夜に起こったことを伝えなければ…と。

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