生き髑髏ーいきどくろー

 ご息災やもご子息よ。

 なんともまぁ、かけまくも嘆かわしい。


 そんな兼ね合いの様な掛け合いから始まるは、歓談として雑談、対談にして相談を申し上げた大鋸御一家おがみごいっかが棟梁・大鋸御 ひじり


 相対するは両端に数多の羽織が掛け並べられた自室の持ち主、渦切の頭領に当たる丹波その人である。

 向かい合いそして話し合う2人の間には、当然の如く当たり前の様に他の人物はいない。言葉通りの2人きりである。そう同性同士ではあるが否、同性同士だからこそ、一度意味を間違えて解釈をされると誤解からなる悲惨な……とある一部のへきというべきか、くせというべきかを持つ人種以外から見るに先を追うこともままならず尚更に言ってしまうと目を覆いたくなる現場に否、発展場になる可能性は万が一にも億が一にもない事をここに書き足しておかなければならない。


 周囲に人の影がない事を気にし眼を投げるのは聖。


 「やぁ、丹兄。久しいですね。攝坊も大きくなった。それはもうこの僕と遜色そんしょくない程に。」


 「あぁ、大きくなったがそんな話をしにきたのではないのだろう?」


 まぁまぁ。と線の細い顔と華奢な体をくねらせる。


 「丹兄には申し訳ないの一言なんだってさ。地動渦羽織は盗まれた。残念ながら証拠も行方も見ないままに」

 

 険しい顔を浮かべる丹波を前にけれどね、と続ける。

 「証拠がないことこそが証拠、なんてこともあっちゃうと僕は思うんだ。たかだか20年前の事で言葉を丹兄も覚えているはずなんだよ。」


 その言葉を耳にした丹波が片眉を上げ、ありえないと言わんばかりの表情を浮かべた。


 「生き髑髏の晒し首。」

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