天礫ーあまつぶー
一人で、1代で、此処大江戸を支える大工の組が1つを任せられる程の人間と聞いて、想像に易いのは筋骨隆々で気前のいい、いかにも旦那という言葉が当てはまる様な人相を、人物がいの一番に挙がるだろう。そしてその想像は概ねあっている。他の組の大工棟梁に関しては。
だがその例外が一人。大鋸御 聖その人だ。
体は華奢そのもの。体自体も体の線も細く爪楊枝のような男である。身長も低く、その見た目も相まって攝の並べても同年に見えるような若さを持ち、巷では妖術から魔術、陰陽術から呪術にまで手を出していると噂が立つほどにその見た目は青年、いや青年も超えて少年と言われることも少なくない人物である。
それでいて齢30過ぎというのだからそれは術の1つや2つを疑われてもおかしくはない。
そんな聖を棟梁たらしめるたった1つの異能に近い才能があった。
それは人を引っ張っていく、時代を変えればカリスマと呼ばれる才とはかけ離れた、はっきりと言ってしまえば逆を行く"人を頼る才"。
そう、たったそれだけ。故に何も持たず、何もできなかった聖はすべてを味方につけ、すべてを扱える人間になったのである。
渦切 丹波もその才にこの大江戸の未来を見出し涙とともに頼ってきた聖に我が羽織。力を引き出し、力を操る。
あらゆる力の奔流を
それを奪われた聖が馬酔木と攝の後ろに立ち声をかける。
「おお、
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