付喪神ーつくもがみー

 闇夜が囲む渦切の奥座敷。その一部屋で思案を、嫌。思惑を巡らせる不気味な老婆が1人。そう、後に老傘咒ろうせんじゅとの恨み名うらみなで呼ばれることになる現御意見番・累火るびである。



 ◯さて、取り返したソハヤは蓮芭牢れんばろうに取り敢えず置いてきたんじゃけ。よもやあやつは牙を抜かれた虎と言っても良いが、不安要素は拭えぬ。


 気になる箇所は多々ある、そして多岐に渡る。

 ソハヤを落とした後、あの片割れは速さを失わなかった。渦切の羽織は羽織っている時という限定的な条件でのみ対象の潜在能力へ干渉し、持ちうる一点の能力を突出、そして特出させるというもの。


 どの羽織もその条件は土台として揺らぐことは決して無いはずなんじゃけ。羽織の能力の起源にして根源に当たる、付喪つくも達との契約、そして使役。羽織自体に取り憑かせる事で成り立つことが大前提であるはずなんじゃけ。


 一度憑いた付喪共が憑いた対象はおりから憑く先を転置てんちすることは無い、というより出来ぬはずじゃ。婆様達を除いて(覗いて)じゃが。

 婆様達は近しいことが出来た。見えたんじゃけ。確か【憑き綴りつきつづり】と呼んでおったんじゃ。




おぉ、そうじゃった…。そうじゃった…。



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