憑き綴りーつきつづりー

 【憑き綴りつきつづり】。


 初代渦切、双璧のたかと呼ばれた双子の姉妹のみが行えたとされる技法。それは、羽織の伸び代への干渉の余分付与。

 羽織を脱いでも数刻程、着けた者に効力が残るというものだ。


 あらゆる事象とあらゆる状況を加味し想定した上で、自身が創る、自刃じじんたる羽織が己に刃を向けぬようにするための対策が故の技法だった。

 二人で1つの羽織を扱い立ち回る。それは、血の繋がった、同じ血を介する双子故、扱えるに至った異端というべき限定的で決定的な技法だったのである。


 双子という血の繋がり。それを土台として初めて成り立つ技法羽織ぎほうばおり。だからこそ、累火るびは疑った。地下に投げ置いてきたソハヤにその技法が組み込まれていないかと。だが、不安はまだあった。


 こんなに歪んだ思想を持つ累火ではあるが、それでも、そうだからこそとも言えるが、御意見番の地位を長年確立してきた程にはその頭の回転の速さを使った予想・予見・予感の鋭さは軍を抜いているのだ。


「もう1つはあの片割れ特有の体質かもしれぬという懸念じゃけ。今までの双子もそうじゃった。生まれ落ちて覗いて見れば、どちらかが特異変質持ちだったんじゃ。今までは。」

 「じゃが、今回の双子は偉く婆様達に似ておる。攝、攝累。双方共、特異変質持ちの可能性を見出すならば、攝累。彼奴きゃつが持ちうる特異は睨むところ、羽織の能力の乗っ取りか、自身への落とし込みじゃろうて。」



止まらぬ考えを巡らす累火。それは、攝累を、あの双子をそれほどの脅威と認識している裏返しとも…言えた。

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