回顧ーかいこー

 この私。渦切丹波うずぎりたんばは振り返り、そして思い出す。


 我が娘。攝累きょうらが語った事を。


 せつを襲った夕刻の襲撃者。攝累が剥ぎ取った黒い手袋。そして何より入れ替わり、いや詳しく聞いた所では変わり身の様な能力を持つであろう塵羽織ちりばおり……。


 その後、羽織は纏っている人形ひとがたごと塵と消えたらしいが。穿うがった攝累の蹴りによると血肉、骨折の感覚はちゃんとあったらしい・・・。我ながら自分の娘が怖ろしい。


 その消えた羽織に関しては反物の特性も含め、着飾つきかざりに聞きに行った方がいいだろう。


 そんなことはさておき、攝累が言っていた、いや言ってきた黒い手袋に描かれた紋様。

 どう云う理由で、どんな訳で消えたのかは定かではないが私には其の紋様が見えなかった。


 朽ち果てた羽織、紋様が消えた手袋。襲撃者の見姿。何1つ証拠がない。

 あるとすれば…。


 最後に攝累が告げたあの言葉。


 「あの羽織。昔、母を殺した攝と同じ匂いがした。」

 

 

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