鮮獄ーせんごくー
少しの茜が混ざる様な日の下を
今しがた、日頃ご愛顧
屋敷全体が多少暗いというのか、嫌に静かな気がするというのか。微量で微細な違和感ゆえの勘違いの場合もありますが……。
その不安からくる
我が渦切の
いえ思いを巡らせるのもこの辺にしておきましょう。
「返事がありませんね馬酔木さん。どうしたのでしょう。」
「ええ、たしかにそうですね。先程触れた扉は軽い気がしました。開いているのかもしれません。攝様少しばかりお下がりに。」
はい、と下がった攝様から視線を外し扉に力を入れる。
開いた。
最初に見えるのは大広間。奥の壁には
長く使われてきたであろう大工道具の一式が横に並ぶように掛けられています。
まさに圧倒にして圧巻というべき
右から。
指矩(さしがね)・板図板(えずいた)・玄翁(げんのう)・掛矢(かけや)。
色々並んではいますが、1つ抜けているのが少し気がかりですね。
◯
そう
「死んでおくれ。渦切。あなた達のお陰で私は見事な程に、鮮明な地獄を見た。」
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