朧ーおぼろー



 

 捉えた。


 

 だが、それはほとんど"布地が手に触れたから取り敢えず握り込んだ"という程度の認識と認知だった。惨劇の忌双子いみふたごと呼ばれる事となった自らの過去を取り戻し、思い返す。


 それに加え、自分の血族が行ってきた過去の所業、もとい業というべき行いを垣間見て心がぐちゃぐちゃに入り混じり、入り乱れてしまっている今の攝累の意識は朧。視界はかすんでしまっていた。


 そんな、混濁の中。なおさら嫌な音が耳に入ってくる。布地が裂けて、引き千切れる音。

 聞こえていた。だが、聴こえてはいなかった。


 はたから見ると、否。聞くとそれは、幼い少年、いや。少女の悲鳴のようなつんざく、聞くに耐えない音だった。




 ◯

 油断した。だが、それも当然じゃろうて。

 確かに、確実にソハヤを奪い取った、引き剥がしたのにも関わらず、目の前のむべき片割れの動きは一向に鈍らないんじゃけ。


 なぜじゃ。なぜじゃ。


 長らく。それは、それはながらく。渦切に身を置いて長いワシじゃが、羽織を脱いで後も効力、能力が尾を引く事がある、なんて事は殆どと言って無い。見たことも、出会った事もない。熟熟つくづく忌まわしい双子じゃけ。だから、生まれ落ちるたび、画策・計略・策略を持って全てほふってきたんじゃけぇの。


 双子はいつの時代も、どのつがいも、、、。




 わずわしい。

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