丹波-たんば-

 さて、今しがたこの渦斬屋敷を囲うへい門扉もんぴに立ち、

息子の帰りを待つ私は、頭領にして頭目にして当主。渦斬丹波たんばである。

 堅苦しい出だしにはなったが、まぁこの時間、戌の刻に差し掛かる今の今まで帰らない息子”渦斬攝”に、危疑きぎを抱き、危惧し危懼きくしながら帰りを待つ私の心境は……。


 まぁ難しく、まぁ無駄に格好を良く語ってきたが、要するにとんでもなく、とてつもなく心配なのである!


 あぁ……、昔からこの渦斬の家系の本家。長男に生まれ、後に当主の座を約束されお固く。そしてお堅く育てられた。

 確かに反発し自惚れ、自由にやっていた時もあったにはあったが…。お世話になった、先生は元気にしてるのだろうか…。まぁあの人…"天狼"に限って災難も災禍もない、いやあってもないに等しいだろうが。

 

 まぁ、当主になったのちにも堅実に、そして厳格に我が子を始め分家の者や弟子などを教え伸ばして来たが、実の所この私、丹波は激情家で心配性で怯弱なのである!


 今も腕を組み怯え顔を貼り付け、い、いや心配なだけなのだ……。ま、まぁそうゆうことで、扉の前にある灯籠に照らされながら息子を,闇夜が包む砂道で待っている次第なのだが。


 本音を吐露してしまうと。


 も、もういい。頼む、心からの願いだ。攝、早く帰ってきてくれ。攝累がついているだろうから確実に無事だろう。

 早く屋敷の中の居間に入りたい。なんにせよ夜の外というのは、単純に怖い。

 先程も言ったが小心な私からすると暗いだけで十分怖いし、外に出たくないんだ。

 屋敷の中でまったりしたいのが本音だ。そう誰にも言えない心境を巡らせていると、後ろからうんざりするほど昔やられた声と感覚が後ろから襲う。


「のろしてやる……のろして……やる……」




 よし、許さん。

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