混じり者ーまじりものー

「あたしは普通の化け物だ……」


 さぁ、そんな当たり前で語り慣れした言葉を

夜の陰に潜んでいた盗人に浴びせたら、もう

あたしが使う言葉は無いね。


 さて先に穿った卍蹴りは、何が要因で原因

なのかまでは分からない。


 確かに感触は人間のそれだった。だからか

 伺見うかがみが使う身代わりではないことは確かだね……。


 まぁ手袋は剥ぎ取ったんだ。後で親父殿の

所に持っていくさね。

 捉えられるか怪しいものだが、打ち込んでみようか。

 さぁ、貫手だ。ソハヤの疾速も乗っている。

 たかが貫手だがされど貫手だ。狙いはやっぱり鳩尾みぞおちだね。



 ん?さっきとは違い感触もない。確かに鳩尾当たりを

狙ったはずなんだけれど。

 鳩尾は外れたとして、身体自体からは大きくズレては

いないはずだ。確実に。


 「本当に怖ろしい、おぞましいな。姉、攝累……。策は2重にも3重にも張っておくものだ。」


 ほう、あたしも出し抜かれたわけだ。出し抜いたと思ったんだけれどね。

 陰に人影も見えない。もう居ないのだろう…。致し方ないね。


 色々にして様々な事は知れた。此処はあっさりと、きっぱりと

そしてさっぱりと身を引き、帰るとしようかな。

  よし、着飾からの反物も身から放してはいない。

 この強くて格好良い攝累お姉ちゃんも流石に疲れた。



 なんたってまだ17歳のか弱い化け物なんだからね……。

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