双子の羽織は、江戸を舞う
縁
第一話 【双子の羽織は、江戸を舞う】
暴風
あらゆる種類の風が、あらゆる描き方で
羽織が走る体に掛かり風を切って
水色の淡い光を放つその羽織を
その少女が強気かつ余裕のある声で相手に語る。
「ねぇ、可愛い弟にだけちょっかい出さないでよっ」
そう言葉をかけると同時、
少女の姿が落ちる様に盗人の目の前から消えた。
その動きは
次に盗人の目が追い
地にうつ伏せの形で寝そべるような体制、
下から天を見上げるような鋭い目線と
今にも
「お姉ちゃん妬いちゃうなぁ?」
その言葉が這い上がって盗人の耳を
盗人の視線が少女の眼を
バネの様にいや、
命を刈り取る程の速さと、
威力で盗人の
"バツン"
そう、放たれたのは卍蹴り…。
月が照らす明るい夜に
打たれた盗人の口からは血が吹き飛び、
ポコポコッ…ヒュー…ヒュー…。
開けられた首から覗く、喉仏から
血を押し出す空気が漏れる音だけが
この江戸の下町に張り巡らされる
喉を潰され、命の炎さえも握り消される寸前の
盗人に語りかける少女。
その身姿は、腰まで達した跳ねっ毛混じりの黒髪。
眼からは
「良く効くだろ?あたしの蹴りは。
まぁそれを食らったんだ、
おめぇさんの命も長くはないのは
火を見るより明らかだね。」
そう言うと
猫背になり
鋭い視線で覗き込みながら、口を動かす。
「なぁ、聞かせてくれよ。
我が弟"
御目当ては、この羽織だろう?
確かに弟の
ただ自分ではいまいち使いこなせては
いないんだけれど…」
そう言いながら、自分の着ている
ヒラリと
「ソハヤ"
あたし含め
私は織れないけれどね。
まぁ良くも悪くも
程良く名が知れ渡ってくれちゃってはいるけれど。
可愛い、か弱い、弟"
弟想いの出来るお姉ちゃんからすると頂けないねぇ」
纏った羽織を舞って見せながら、
血の
「あらら、もう死んじまったのかい。まぁ良いさ
おめぇさんからは何も聞けなかった、
いや口を聞けなくしてしまったのはあたしだね」
ふふっと含み笑いを顔が作り出すと、そのまま続く
「その
そう言うと、血溜まりを作る盗人の
少女の姿が一瞬にして消え失せた…。
残るは死体と
その
月夜の地に
◯
日の光が真上から降りかかる正午
広い屋敷の一部屋、
池水の
中庭を繋げ
庭の緑に混じる
優しい風に揺れる中
カタカタカタッと
○
僕の自己紹介を少しばかり聞いて欲しい。
僕の名前は
声に出すには
少しばかり書きにくい名前を貰ったのは
今は亡き姉"
唯一の共通点であり、繋がりを実感できる
証になっていた。
僕の姉についてはまた後で語るとして、
今は僕とその一族について少しばかり話すとしよう。
僕の苗字として先程上がった"
自分で言うのも小恥ずかしいのだけれど
羽織を作る一派の中ではそこそこに、
それこそ
街を歩けば一度は名を聞く程には
知れ渡っていて
一族、総じて漏れなく
羽織を織る為、織らせる為に
繁栄したのではないかと言われても
致し方が無くも、
まぁその中で
僕も小さい頃から
見取り
寄り添って見ていた
仕上げることが出来る程には成長があった。
"
一般とは一線を
明確かつ正確に伝えると
【異様にして異常、異形にして異能】
と言う他に無いと思う。
僕はこの一族いや、一派に産まれ
この
囲まれ育ってきたからなのか、
不思議、疑問に思う事もなかったのだけれど、
ある程度、歳を重ね、
そして青年になる
目線、
この羽織は他の羽織とは
一味も二味も、いや、一癖も二癖もある
羽織なのだという事を
伝えておくべきなのだろうと思う。
その、先程にも言った
【異様にして異常、異形にして異能】
と呼ばれる1つにして最大の理由、
それは
"
どの言葉を取っても、理解し
いやどちらかと言うと、誤解し
言葉の
僕が最初に創った"ソハヤ"なら
父が創り上げた"チドウ"なら力持ちに、
伸ばす事が出来るみたいだ。
"みたい"と伝えたのは
この
在能力を引き出すだけで、
残酷にも身体能力や運動能力を
潜在能力が
僕が
当たり前にその羽織の恩恵を使いこなす。
そして相手の技量、力量、
見極めてになるけど
そうしてこの
【異様にして異常、異形にして異能】
と言う
広がって行った…
するとやっぱり、
悪意を持って悪用して悪事をする為に欲する
盗まれたり、一派の職人自体を狙った
この僕も、父に
「
特にお前は"恩恵"を受ける事が出来ないからね」
そう釘を刺されてはいるが
その言葉を掛けられるたびに
小さい声で、ボソッと呟く。
"まぁ、
と亡き姉の名前を出すのだ。
おおっと、
もうそろそろ
時間だ。用事を頼まれていたから
もうそろそろ家を出る準備としようかな。
僕の姉、"
また
◯
そう言うと、
不穏な悪人を、
自作にして
細く
毛先が黒い女性の短髪を思わせる白髪を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます