恣ーほしいままー

 荒ぶる黒蜘蛛を迎え撃つのは天才・鬼才・天武の才の言葉をほしいままにすることとなる渦切 攝累きょうら

 いちいち技名なんてものを言うことはない。迎撃する技は体制が物語っていた。


 半月当て。


 避ける武道と呼ばれる躰道たいどうの中で一際ひときわカウンター色の強い逆回転の回し蹴り。


 右手を押さえ、襟首を掴み固定する。

 片足で攝の両足、かかとを押さえて引けなくする。

 余程のことがなければ抜けることができない状態で封じる丹波たんば。唸りを上げるせつに向かって攝累が口火を切った。


 一気に距離が縮む、左手首で操った黒糸が迎撃する。

 頬を掠めかすめようとした時、攝累の体が背骨を軸として反時計回りにぐるりと捻れる。下半身を折り曲げ、ストンと下がる胴とは逆に、跳ね上がる利き足の踵。



 目指すは攝の頬骨ほおぼね




「これだけのしなりだ。力を抜いて少し触れる程度で意識は奪える。」


 筈だ。そう確信はない。確定もない。出来る加減はやるだけやった。

 最低限、命の保証はしてやっている。ぐらいの気持ちで傷つけることを良しとする、傷つけないことを否とする考えの元、出された攻撃。否、急撃だった。





 結論から言おう。

 親殺しを行った渦切攝は、座敷牢に安置されることで終劇となった。


 

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