故ーことさらー

 真宵を照らす月の明かりを背に受け、渦切屋敷うずぎりやしきの屋根の上にしゃがみ想いを募らせ、思いに耽っている忌双子の片割れ、渦切攝累うずぎりきょうらの惨劇と言わしめた過去を今振り返ろう。


 ◯

 代々一家相伝で受け継ぎ、異能を超えて異形とまで称された唯一を持ち、永劫的な繁栄を約束されたこの渦切一派の歴史の中で一人っ子から始まり飛んで3つ子、4つ子と多胎児たたいじが産まれる事は往々にしてあったがこの家系には一度として双子。いわゆる双生児が生まれ落ちることはことごとく無かった。


 それを歴代頭首を初め、御意見番を除く上役達は初代の因縁があるのではと疑いを持っていたのだ。それもそうだろう。渦切の歴史の中で初代のみが双子だったのだから。


 そんな欺瞞と疑心の中、生まれ落ちた丹波の子供達。そう、せつと攝累。


 分家の者たちからはそれは様々な憶測と推測が飛び交った。

 ある者は、双子を初代の生まれ変わりとしておがみ。

 ある者は、双子を呪いの子じゃとののしり。

 ついには、上2つの派閥で渦切が滅びゆくと奇天烈な傾奇者かぶきものさえ現れた。





 そんな色目に当てられながらその双子は育ち、物心がつき始めた頃。不穏を纏った闇夜に目も当てられない惨劇が起こる。

 

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双子の羽織は、江戸を舞う 綾凪 @yosugatari

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