39.あいつの中身/鯛谷木
作品名:あいつの中身
作者名:鯛谷木
性癖:アホっぽい主人公
性癖:中身のない生物
性癖:人間化しない性別不明の人外
性癖:人外らしい恥じらいの基準
性癖:古典的なオチ
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657570809668
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第四回性癖小選手権からご参加いただいている鯛谷木さんです。
第四回の時も多彩な性癖を発表して頂いた方なのですが、やはりまだまだ沢山の性癖を抱えていらっしゃる方でした。性癖が多いという事はそれだけ沢山の事に情熱を向けれるという事なので素晴らしい事ですね。
さて、「いわゆる剣と魔法的中世風ファンタジー世界の人外人間恋愛(に今はまだ発展しない)物語」という事で始まった今作ですが、導入からして勘違い野郎が悶々としていてラブコメの雰囲気が漂っているのがいいですね。最初からこの作品がどういう物か分かりやすく説明してくれていますし、何よりも性癖に書かれている『アホっぽい主人公』が本当にアホっぽく描写されているのがニヤリとしてしまいます。
内容としては『アホっぽい主人公』が戦友は女かもしれないと悩みを抱えているという物で、始まりので既にアホっぽいです。戦友の性別を疑う部分は分かるんですが、そう思いながらも下ネタを振るとか風呂に誘うとかアホでしょう(※褒めてます)。同性であってもノリが合わない事があるだろうに、そこで「あいつは女かもしれない。動かぬ証拠が何個もあって否定しきれない」という考えに至っちゃうのも本当にアホっぽいです。
そして、そこからの実は風呂に入らないのは鎧が本体の『中身のない生物』だったからですというネタバレ。戦友が抱えている秘密が性別の事だと思っていたから肩透かしを喰らったものの、鎧だろうが気にならないと答える『アホっぽい主人公』。良い奴なんですが、恋のチャンスじゃなかったからってそこで「お前を着させてくれないか?」はダメですよね? 完全にアホです(※褒めてます)。
そもそも相手は鎧が体の一部であり、こうやって『中身のない生物』が説得力の為とはいえ体の中を見せてくれたのはとてつもない決断だったのだと想像が出来ます。人間で言ったら全裸や内臓を見せるみたいな物ですよね? そこで「お前を着たい」はどう考えてもセクハラです。
鎧の種族的に同性であっても恥ずかしい事だろうってのは想像が付くのに、「合体攻撃とか、できちゃうのかな!?!?」でそれを聞いちゃうのが本当にアホ(※褒めてます)。『人外らしい恥じらいの基準』に鈍感な主人公。とても良いラブコメで見事に『古典的なオチ』でした。ありがとうございました。
ただ、これ程『アホっぽい主人公』のアホさ加減が全面に押し出された作品ではありますが、鯛谷木さんが一番伝えたかっただろう性癖は『人間化しない性別不明の人外』ではないかと感じました。
この作品の話の中では鎧が本体の彼女(彼?)は人間化するという様な話も描写も無く、一見しただけでは『人間化しない性別不明の人外』という性癖はこの作品には関わらない物なのではないかと思えます。
例えば『アホっぽい主人公』がここから「人間じゃなくて鎧のままがいい」と提案したりだとか、鎧側が「人間にはなれないんだ」と発言したりとか、『人間化しない性別不明の人外』が人間化しない理由の説明があれば見て直ぐにこの性癖を挙げた理由が分かります。
しかし、そのような描写が無くとも『人間化しない性別不明の人外』という性癖を挙げられているという事は、逆説的に彼(彼女?)は「今後何があっても人間化はしないし、性別は不明のまま」という事になります。その理由が、『アホっぽい主人公』が人外であっても友情は変わらないと態度と言葉で示してくれたからなんですね。
コメディ調でさらっと流されていますが、これは人外側からしたらとてつもなく嬉しい事だったのでしょう。その後のセクハラ発言でうやむやになってますが、きっともうちょっと口説くように「君を着たい」とか言っていたら着させてくれたかもしれません。
いやぁ、いいですね。種族が価値観が違う物同士なのに成立する関係。人外人間恋愛(に今はまだ発展しない)物語という事なのでいつかはこの二人は恋愛関係になるんですよ。素晴らしいですね。安易に人外が人になって人同士でくっついてハッピーエンドを迎えるよりも純粋な好意を感じられます。そう、人外だったのにわざわざ人間にならなくてもいいんですよ。人外のまま人とくっつけばいいんです。少なくとも自分はそう思います。
文字数は1000文字程度と短い物でしたが、その分性癖がギュッと詰まったとても良い人外物の性癖小説でした。
出来ればこの二人が付き合ってイチャイチャするところも読みたいのですが、だからこそここで終わるのが性癖小説として正解なのかもしれません。先が気になるという事はそれだけ心に残ったという事ですから。
ご参加ありがとうございます。素晴らしい性癖小説でした。
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