49.良い週末へ/おくとりょう

作品名:良い週末へ

作者名:おくとりょう

性癖:「おわり」

性癖:「飄々としたキャラクター」

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657805571441


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 一作目は地面から生える手による優しさを現わした作品を投稿され、二作目では抱きしめる為の腕が多い種族と人の愛の話を投稿された、おくとりょうさんの三作目です。


 性癖に『終わり』と書かれていることと本文から判断するに、どうやら世界が終わってしまった後のエピローグ的な空間なのに新しい生命が生まれてしまった様で、なんらかの超越者である『飄々としたキャラクター』が難しいようで分かりやすいような聞き手を煙に巻く話し方で語りかけているという作品ですね。

 作品が始まった時から物語が終わっているというのはプロローグにエピローグを持ってくる技法として稀にありますが、おくとりょうさんの今作は本当に『おわり』の部分だけで次の世界がありそうな期待は持たせていますがその後はどうなったかは分かりません。こういった起承転結の好きな部分だけを切り取って作品として発表するのが性癖小説選手権の醍醐味みたいなところがありますので、このタイプの作品を投稿いただけるのは嬉しいですね。どんどん好きな部分だけ書いていきましょう!

 又、『おわり』という性癖を性癖小説選手権の最後の作品である三作目に持ってきた部分にもおくとりょうさんの『おわり』に対する拘りを感じます。一作目とも二作目とも作品試合の関連性はありませんが、三作目に『おわり』を持ってくることで三作合わせて性癖小説に投稿した短編集だと捉える事が出来てしまうんですね。作品外の部分にも性癖を絡めてくるというテクニカルな部分は個人的に評価が高くなります。それだけ『おわり』の性癖が好きだという事の現れですから。


 おくとりょうさんの作品は一作目も二作目も直接肉体で触れ合って優しさを確かめる作品だったのですが、三作目は逆に手や腕どころか肉体そのものが無い状態の何者かが『飄々としたキャラクター』からもう終わってしまったという、一見は受け手に対して厳しいお話で真逆のように見えます。

 しかし、この案内人である『飄々としたキャラクター』は『おわり』を告げてはいるのですが世界が終わってしまう事を悪い事だとは考えておらず、世界が終わればマイナスな部分が無くなるというメリットを示したり、始まりがあれば終わりがあるのだから終わりがあれば始まりがあるかもしれないという希望を口にしています。

 通常ならば『おわり』というのは悲観的なイメージがありますが、この作品が捉える『おわり』は悲観ではく、寧ろ楽観的な物を示しているのではないでしょうか。『飄々としたキャラクター』もほとんどの場合でもうさん臭さを感じる物ですが、うさん臭いからと言って悪とは断定できません。どちらかというと胡散臭い也にも優しさを感じますし、もしかすると善や悪を超越したところに居る存在なのかもしれませんね。世界が終わってしまっていますしね。


 以上の事から、おくとりょうさんは一作目で救われる優しさ、二作目で救われない優しさを示し、三作目では救うとか救わないを超越した優しさをテーマに作品を作られたのではないかと感じました。

 三作とも優しさがテーマとなっているのはおくとりょうさんが優しい方というのもあるのでしょうが、おくとりょうさんが世界に臨んでいるのが「優しさ」だからなのではないでしょうか。

 「優しさ」を求める心は性癖とはまた別の部分にある物なのでしょうが、おくとりょうさんが性癖小説に込められた「優しさ」には強い思いがあります。読者がその優しさに触れる事で読者の優しさの種類が増え、それが積み重なれば世界の優しさの総量はきっと増えるでしょう。


 性癖はドロドロした者だけではなく、爽やかさを覚える物をあるという良い見本となる作品達で、読んだ後に優しい気持ちになれる性癖小説でした。

 ご参加、ありがとうございます。

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