48.リープ・インビトイーン/田辺すみ

作品名:リープ・インビトイーン

作者名:田辺すみ

性癖:カエルもどき

性癖:水面の街

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657813579210


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 一作目では川という言葉が持つ普遍的なイメージの性癖ではなく、自身の思い出の中のコンクリートに囲まれた川について記載を頂いた田辺すみさんの二作目です。


 今作はとても壮大なSFの話になるのですが、その壮大なSFの部分が『カエルもどき』と『水面の街』の性癖の描写の為だけに用意された物であり、とても贅沢なSF設定の消費の仕方で思わずニコリとしてしまいました。自身の性癖の為になら作中で人類や地球が犠牲になろうが構わないという性癖至上主義とも取れる姿勢は大変素晴らしいです。性癖小説は性癖を魅せるのが目的ですし、性癖以外の物にはどんどん犠牲になってもらいましょう。

 しかし、そんな地球が侵略されていたり他の惑星が滅んでしまっていたりする犠牲のある世界の設定でも、その犠牲の上で暮らしている主人公達は楽し気な学生生活を送っています。落ちたら沈んでしまいそうな場所でも笑っていますし、カエルが進化途中の宇宙人と分かってもかわいいという感想を捨てません。主人公の少女だけでは無くて作品全体の文章自体が楽しそうにきらきらとしていて、作者である田辺すみさんが楽しそうにしているのが伝わってくるようです。『水面の街』という、ともすれば寂しさや静寂を意味するだろう性癖で楽しさを現わす事が出来るのは才能だと思います。性癖表現者パッショナーとして素晴らしい物をお持ちですね。完成されてると言ってもいいでしょう。


 田辺すみさんの作品からは同じ言葉や単語であっても人によって様々な解釈や感じ方があり、そこに込められた思いや性癖としての捉え方も人によって別々なのではないかというのを提示されていた様に思えました。

 性癖というのは凡その場合で同じ性癖に対して同じ感想を持つものです。これはその人がその性癖を身に付けるに当たって摂取した物が同じ場合が多いからであり、性癖の強い作品はパターンがだいたい決まっているからです。

 しかし、田辺すみさんはそこで「自分が感じた性癖の会社気うはこうだ」と世間に向けて自分の解釈を強く主張されていました。世間の人が感じている性癖の解釈と違うという事は提示した性癖に共感を得て貰うのが難しい物ですが、寧ろこうして自分の感じた性癖をアピールする姿勢は性癖小説の形としては十全に正しい物です。そもそも世間に合わせた小説を投稿頂くのではなく、自分の性癖に対して素直な作品を投稿頂くのが性癖小説選手権なのですから。

 

 個人的にはもう少し長く田辺すみさんの世界に浸っていたいと思ったのですが、文字数と表現したい物の大きさは比例する物です。性癖小説としては物足りなさを感じるぐらいが丁度よいとも言います。

 作品自体の完成度が高く、とても面白い作品でありながら自信の性癖を貫いた田辺すみさん。その姿勢は尊敬する物であり、性癖小説選手権の主催として参加頂けてとても嬉しく思いました。

 出来れば今後も性癖小説を書き続けて下さい。応援しています。

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