33. 花鳥風月と光 ~呪いのフランス人形~/夢月七海

作品名:花鳥風月と光 ~呪いのフランス人形~

作者名:夢月七海

性癖:コメディ漫画の単行本の最後に収録されているエピソード

性癖:訳あり父娘家庭

性癖:喪服の死神

性癖:常にシンクロしている双子

性癖:大切な人を守るために我が身を犠牲にする人外

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330656678263542


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 夢月七海さんは前回の第四回性癖小説選手権からご参加いただいている方で、前回は凸凹男女コンビの殺し屋と独自の思想に基づく殺し屋が戦う性癖小説を投稿頂いた方です。全編にわたり性癖が溢れる作品となっていたので、今回の作品も楽しみです。


 そんな楽しみな内容ですが、やはり今作も最初から性癖に溢れており、いきなり意味深で属性過多になりそうな登場人物紹介から始まります。

 性癖紹介に書かれている性癖のうち、『常にシンクロしている双子』『訳あり父娘家庭』『喪服の死神』の三つの性癖も登場人物紹介でどういう物かという説明があるのですが、それ以上に上の双子の属性として「順番に喋る」「おそろい色違いの和服」「裏社会の便利屋」「武器はクナイ」という物があり、下の双子にも「同時に喋る」「おそろい色違いの和服」「姉たちが母代わり」「天真爛漫」と属性が多く付いており、更には父親は「見た目二十代半ばの千年以上生きる不老不死」「死神」「回復力」「テレポート」「無条件即死」「SF好き」と、これでもかと言わんばかりの属性が詰め込まれています。

 これだけ多数の属性を記しながらも、提示した性癖として記載されているのは五つだけです。恐らく、これらの多数の属性はオマケ的な部分であり、本命では無いので性癖紹介に記す必要が無いという表明なのでしょう。性癖小説選手権の性癖小説は性癖が多ければ強いという訳では無いですし、逆に少なければ濃いという物でもありません。提示した性癖がいかに素晴らしいかを作中で示して頂くのが評価に繋がる部分です。夢月七海さんは正にこの評価の仕方にぴったりな製作をされている訳ですね。流石です。


 登場人物紹介が終わると本編に入るのですが、それが『コメディ漫画の単行本の最後に収録されているエピソード』という性癖紹介に記された内容のお話となっています。これだけで雰囲気がだいたい伝わるから凄いですよね。登場人物紹介と合わせる事でコメディと言いながらもバトル描写や恋愛(に発展しなかった)描写もあるなんでもありのストーリー物の作品だろうという事が予想出来、そのおまけエピソードとなれば主役の二人は色んなイベントがあった成長後で頼れる存在なんだろうという事もなんとなくで分かってしまいます。人物紹介というあまりカクヨムで見ない手法を上手く性癖に絡めていらっしゃいますね。性癖小説が上手い。

 また、『訳あり父娘家庭』というのが通常考えうる訳ありの内容の「子育てに関わっていない」という物ではありつつも、その理由が「父親は千年生きる不老不死の死神だから」というのが読者の予想の一つ上を行きながらも読者に(それはそうだ)と納得をさせる物となっていて、こちらも性癖の扱いが上手いと言わざるを得ないでしょう。


 他にもゴミの山から拾ってきた呪いの人形をオカルトをまったく気にしないから妹への贈り物にしたり、成仏後に死神の父親が仕事の繋がりで持ってきたり、そもそも名前がタイトルになっていたり、全体的に漂うモダンの雰囲気も良かったりと、どこをとっても性癖と設定の使い方が上手い作品でした。

 そもそも作品の全てが『コメディ漫画の単行本の最後に収録されているエピソード』という性癖で一くくりにされている為、作品のどこを見ても『コメディ漫画の単行本の最後に収録されているエピソード』という性癖のアピールを受けている形になり、この作品を面白いと思った時点で『コメディ漫画の単行本の最後に収録されているエピソード』という性癖を受け入れているという、とても力技の構造になっているのも高評価です。


 とても性癖力が溢れる作品であり、世の中の性癖小説を書かれる人達のお手本にして欲しい程の逸品でした。

 これからも沢山の性癖小説をお書き頂きたいと思います。ご参加ありがとうございました。

 

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