13.蹂躙・襲来・暴で討つ/惟風

作品名:蹂躙・襲来・暴で討つ

作者名:惟風

性癖:お互いを想いあう仲良し兄弟

性癖:兄より大きい弟

性癖:素手で首を捩じ切る

性癖:一見まともそうだけどイカれてる

性癖:既に殺されている

性癖:血塗れのハッピーエンド

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330656297416948


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 一見普通な人間と人間関係に見えて実はぶっとんでいる人間や人間関係を書くのが得意かつ、暴力がとてもお好きな方の惟風さんです。

 第三回性癖小説選手権からご参加いただいていまね。今回もご参加ありがとうございます。


 始まった瞬間からいきなり修羅場なのが話が早くて嬉しいですね。

 主人公は弟の為に弟と一緒に夜に外出した所で変な奴に絡まれてしまった兄であり、震える弟を守る為ならば危険を顧みずに前に出る事を良しとするお兄ちゃん。なんという弟思いの兄。弟もそんな兄を信じているのが良く分かります。なんて素敵な『お互いを想いあう仲良し兄弟』なんでしょう。

 この様に、急に始まる修羅場に対して主人公が率先して体を張ろうとする事が「兄だから」とスムーズに分かる様になっており、読者が(兄なら仕方ないよな)と何の疑いも無く納得して先を読み進めれるのが個人的な今作の最大のポイントです。

 こうやって細かい説明が無くとも読者に「この肩書の人はこう動く」というのを納得させる文章を書けるというのが、惟風さんの作品の特徴なんでしょう。

 もしかすると惟風さんは騎士だから「守る」とか、悪役だから「理不尽な暴力をする」とか、「最強主人公だから正面からは負けない」とか、物語上のキャラがその役職を全うするという事に対しての性癖の様な物をお持ちなんじゃないでしょうか。性癖というより願いみたいな物かもしれません。

 しかし、その「役職」通りにキャラが動く事だけが惟風さんの作品では無く、冒頭に書いたとおりにぶっとんだ人間関係も特徴です。兄の裏で怯えているのに『兄より大きい弟』とか、弟の人間相手だと怖くて震えてしまうけど人間じゃないなら大丈夫な部分とか、チンピラに見えて人間じゃないとか、怖がりの弟が『素手で首を捩じ切る』とか、優しそうな兄なのにいじめっ子を物語が始まる前から『既に殺されている』状態で持ち歩いている『一見まともそうだけどイカれている』人物として描写していたりとか、王道をやりながらもぶっ飛んでいる様に見えるギャップの部分を感じて欲しいという部分も惟風さんが作品に込めた思いだと感じました。

 『王道は王道としてありつつも、王道をギリギリ反れない意表を突く展開』。それこそがエンターテイメントであり、惟風さんが作品を通して読者へ伝えようとしている性癖であると思います。

 とてもいいですね。強い思いが込められた作品はそれだけで魅力的に輝く物です。


 本当に全編通して無駄な部分が無く、最後の一文で読者に最大のギャップを与える事が最終目的な素晴らしい性癖小説です。

 最後は『血濡れのハッピーエンド』でちゃんと終わっていますし、性癖の現わし方も読ませ方も性癖表現者としてプロ級でした。

 惟風さんの今後がとても楽しみです。ご参加ありがとうございました!

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