30.祟るとかいう箱/尾八原ジュージ

作品名:祟るとかいう箱

作者名:尾八原ジュージ

性癖:明らかに何かしらありそうなのに、渦中の人物は「おかしなことは何も起こってない」と主張し続けている

性癖:解決されない怪異

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330656634880993


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 一作目では「他の人が持つ自分のイメージの性癖で作品を書く」という作品を投稿頂いた尾八原ジュージさんの二作目です。

 ジャンルは一作目と同じくホラー作品となっていますね。性癖を表現する場所での作品が二作連続でホラーというのは流石はホラー連載の鬼と思わせてくれます。そろそろ性癖に『人を怖がらせること』と書いてもいいのではないでしょうか。進捗の早さも併せて驚異的な方ですよね、尾八原ジュージさん。


 タイトルである「祟るとかいう箱」というのがどこか他人事のような書き方をしているのが特徴的ですが、今作は誰かの伝聞を聞いた話という訳ではなく歴とした祟られている本人達の話です。これは性癖に書かれた『明らかに何かしらありそうなのに、渦中の人物は「おかしなことは何も起こってない」と主張し続けている』という状況が作品内だけでなくタイトルにも掛かっているという状態であり、更には他人事の様にする事で本人達に解決する気が無い(そもそも何も起きてないので)『解決されない怪異』という事も示しています。

 尾八原ジュージさんは以前に「タイトルを付けるのが苦手」と仰っていた気がしますが、今作ではタイトルが性癖と合わさる事で簡潔に内容を示す状態となっているので、この関連付けを狙ってではなく無意識にやられているというならば偶然にしては出来過ぎな気がします。尾八原ジュージさんがホラー作品から愛されているという事なのでしょうか。作品側から作者に手助けがあるのは嬉しい事なんでしょうが、ほぼほぼホラーですね。


 作品の内容としては性癖に書かれている事そのままで、『明らかに何かしらありそうなのに、渦中の人物は「おかしなことは何も起こってない」と主張し続けている』という話が『解決されない怪異』という物。本当にそのままな内容なのですが、それでも中身が気になって読み始めてしまうし、話の展開がどうなるか性癖に書かれているというのに先が気になって読み進めてしまうという魔力や魅力の様な物がにじみ出ている作品となっています。


 この、「提示した性癖そのままなのに読んでしまう作品」というのは性癖小説の目指す姿の一つであるのではないでしょうか。言い換えれば「全編が性癖を現わしている」という事ですし、性癖の為にシーンを切り出すという事をする必要がない、頭からお尻まで全部性癖な小説です。

 尾八原ジュージさんは第二回の性癖小説選手権に参加いただいてからメキメキと性癖力を高めていらっしゃる方で、現在は一流の性癖表現者パッショナーとお呼びしてもいいレベルだと思います。

 しかし、尾八原ジュージさんは作品に提示した性癖を込める事はとても上手いのですが、まだまだご自身の性癖を表に晒けきっていないように思われます。特に今作ですと最後の「そういうときは弟を気が済むまで殴る。弟は何も言わず、されるがままになっている」という部分で、「正当な理由で暴力をふるう様子と正当な理由で暴力を受ける様子」という様な性癖が見え隠れしている気がしました。

 現状で一流の性癖表現者パッショナーな尾八原ジュージさんですが、性癖を表現する事は上手くても性癖を晒け出す事にはまだ戸惑いがある様です。

 その戸惑いを昇華出来た時、尾八原ジュージさんは更なる性癖表現者パッショナーの高見を目指せるのではないかと思いました。

 尾八原ジュージさんの今後にはとても期待しています。二作目の投稿ありがとうございました。

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