45.吸血鬼は蒼い血の夢を見るか?/独一焔

作品名:吸血鬼は蒼い血の夢を見るか?

作者名:独一焔

性癖:吸血鬼

性癖:アンドロイド

性癖:逃避行

性癖:クソデカ感情拗らせて精神的に不可逆な変質を起こしてしまった長命種

性癖:人間と同じ見た目をした、人間とは違う視点・価値観の存在

性癖:対比構造

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657646036998


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 連続で投稿頂きました独一焔さんの二作目。一作投稿頂くだけでも嬉しいのに連続二作の投稿はとても嬉しいですね。小躍りしてしまいます。


 そんな嬉しい作品である今作ですが、結論から言うと性癖小説選手権としてはかなり評価が難しい作品でした。

 というのも、作品の内容は独一焔さんの一作目の裏パートと呼ぶべき物となっていて、一作目では主人公の相手役だった吸血鬼の目線で一作目の出来事の裏を語るという作りになっています。

 内容は勿論独一焔さんが性癖紹介に書いた通りに『人間と同じ見た目をした、人間とは違う視点・価値観の存在』である『吸血鬼』が『クソデカ感情拗らせて精神的に不可逆な変質を起こしてしまった長命種』となり、『アンドロイド』と『逃避行』を行うという物です。勿論、この作品単独でも楽しめる作りになっていますし、性癖小説選手権は話の前後の描写無しで書きたい部分だけを抜粋して書いたサビオンリーの作品でも投稿をOKとしています。

 しかし、性癖小説選手権は一つの作品で評価をする物の為、独一焔さん魅せたい肝の部分の性癖が一作目と二作目の『対比構造』がとなると、それは複数の作品を跨いで評価をする性癖になり、性癖小説選手権の講評の対象外の部分となってしまいます。その為、『対比構造』の性癖についての評価が低い物になってしまいました。

 独一焔さんがやりたかった事や魅せたかった事はとても良く分かるのですが、ルール的にどうしてもこのような評価になってしまいます。申し訳ありません。


 ですが、『対比構造』の性癖以外の部分についてはとてもレベルが高い作品であり、特に『吸血鬼』が人類の未来を憂い、『アンドロイド』の少女をこれだけ気に書ける様になるまでの感情の動きの描写がとても丁寧で見事でした。

 『クソデカ感情拗らせて精神的に不可逆な変質を起こしてしまった長命種』っていいですねよ。自らの在り方を一時の感情で変えてしまうのは愚かな行為に見えますが、本人達にとってはとても幸せな事ですしそれでこそ心がある生き物という感じがします。最後の最後に『アンドロイド』の少女が自己に目覚めずとも個を理解したようなセリフを話すのも合わせて素晴らしい作品でした。


 独一焔さんに投稿頂いた二作からは『人間と同じ見た目をした、人間とは違う視点・価値観の存在』についての性癖がとても強く現れているように感じました。

 『吸血鬼』も『アンドロイド』も人では無いですが、人と関わりがあり、人の外見をした存在です。両者とも見た目だけでは人との違いは分からないのですが、『吸血鬼』は人を愚かな物と扱い、『アンドロイド』は人を憧れの存在と扱っていて、それぞれの視点から見た人間という存在を全く違う価値観によって描いています。

 今作ではこの二人は『吸血鬼』と『アンドロイド』と予め紹介されていましたが、見た目は人間にしか見えないのならば『吸血鬼』と『アンドロイド』という事を知らない人からすると二人はそれぞれどう映るでしょうか。危険思想の人と流されやすい人に見えるのでしょうか。それとも強盗に入られた可哀想な人と暴力に目覚めた女子高生に見えるのでしょうか。しかし、どう見えようとも心の中までは見えませんし、人外かどうかも見た目だけでは判断出来ないのです。

 見た目からは心は分からない。ならば、自我という物はどこにあるのか。そもそも自我に目覚めると劇的に何かが変わるのは本当なのか。他者の自我はどう確認すればよいのか。

 答えが見つからない問いだと思いますが、独一焔さんの二作からはそんな他者の外見と心の存在に関する複雑な思いを感じました。とても深いテーマのある作品だったと思います。本当に素晴らしかったです。


 もしも二つの作品に分けず一つの作品でAパートBパートと分けて頂いていたらまた違う評価を行ったと思います。

 次回からこの点についてレギュレーションに注意事項として記載しようと思いました。こういった場合も想定しておくべきでしたね、本当に申し訳ありません。そして、面白い作品をありがとうございました。

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