46.付き合った彼女がすぐ死んだ/草森ゆき

作品名:付き合った彼女がすぐ死んだ

作者名:草森ゆき

性癖:突然の死別

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657749450995


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 一作目では男男クソデカ感情の作品を投稿して頂いた暴力大好き草森ゆきさんの二作目です。物理的な暴力だけではなく精神的な暴力も得意とする草森ゆきさんなので、二作目は題名を読んだだけでワクワクしてしまいました。


 内容はタイトルと性癖の通りに、付き合った彼女が突然死んでしまうという、『突然の死別』を前にショックを受けてしまった男子中学生のお話です。

 いやぁ、いいですね。無事に恋が実った直後に訪れる衝撃の不幸。今まで片思いだった恋が実は両思いだと判明したり、給仕のデートの事を考えたり、一緒に勉強したりと、これから先の事を色々と考えてワクワクしていた状態からの直滑降。直前までの感情が喜びに傾いている程、『突然の死別』が起きた時の感情の反転の速度は凄まじい物があります。

 何よりも良いのが、男子中学生が彼女に直接メッセージを送った時は何も返ってこなかったのに、お母さん経由で学校からの緊急連絡しかこない電話で自己を知らされる所ですね。それまではまるで自分が物語の主人公かのように振る舞っていたというのに、実は自分の知らない所で何もかもが進んでいて、手遅れな状態になってからしか自分は彼女の状態を知ることが出来なかったんです。さぞや無念でしょう。クラスの連絡網で回ってくる程度の関係性としか周りから思われていないんですよ。可哀想ですね。その可哀想さと哀れさが『突然の死別』という性癖からとてもよく伝わってきました。彼はもう彼女には会えません。本当に可哀想で素晴らしいですね!

 短いながらも感情の急降下が分かりやすく記されていて、登場人物に「こういう苦しさや辛さを味合わせたい」という草森ゆきさんの思いがとても伝わってくる作品でした。流石です。流石草森ゆきさん。理不尽な展開を書くのが上手い。


 草森ゆきさんの作品は二作とも「登場人物にも読者にも辛い思いをさせる」という構造になっていて、単に登場人物に自分の性癖をぶつけるだけではなく、性癖小説を読んだ読者の心が痛む様子も自らの性癖として吸収しているかの様に読めました。

 性癖小説は読者に(この性癖は良い物かも)と感情移入をさせて性癖を受け入れさせる事を評価基準にしていますが、その部分を草森ゆきさんはワンランク上に昇華させて性癖の疑似体験をさせているのではないでしょうか。だとすれば草森ゆきさんの作品は性癖小説の一つのゴールに辿り着いているのではないかと思います。

 小説を読むだけで『暴力』や『拷問』の疑似体験が出来るのは創作物や娯楽作品としてとても優れている証拠です。これだけ優れた作品ですので、草森ゆきさんの性癖が好きというよりも、草森ゆきさんの性癖小説を読んでボコボコにされたいというドMな読者は何名か居る筈です。

 出来ればこれからもその読者の為に、悲痛で理不尽を覚える作品をどんどん書いて頂けたらなと思います。ナイズ暴力! そしてビバ精神的苦痛! 応援しています。ご参加ありがとうございました。

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