11.あなたのお名前。/野村ロマネス子
作品名:あなたのお名前。
作者名:野村ロマネス子
性癖:ちぐはぐな、ペットのお名前
性癖:ちょっと何かを超えてしまってるけど、活き活きしている人
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330656302089672
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前回の第四回性癖小説選手権では双子の入れ替わりと洋館というミステリーの雰囲気バチバチな作品を投稿していただいた野村ロマネス子さん。
今回はお名前に姓を付けられての参加という事で別名の方として判定するか迷いましたが、この場合は同一の方として扱いしますね。
内容としてはとある動物病院のドタバタな一日の様子を描くコメディという感じで、獣医の先生が朝からとても忙しそうに様々な動物の診察と治療をし、お昼ご飯を食べようとしたらミケちゃんが脱走して騒ぎになりかけたけど直ぐに見つかり、また午後からも忙しい診察と治療をして、最後は自宅に帰ってきておしまいという物です。
とても分かりやすい内容で獣医の忙しさを現わしてる所謂お仕事小説として面白い作品なのですが、この作品のメインは瀬尾癖紹介にも書かれている『ちぐはぐな、ペットのお名前』の部分でしょう。
例えば犬なら「ポチ」や「タロウ」、猫なら「タマ」や「ミィ」といった名前が定番に上がる者ですが、野村ロマネス子さんのこちらの作品ではゴールデンレトリバーはマリアンヌちゃんとジュリアンヌちゃんで、三毛猫は菊蔵ちゃん、ポメラニアンは坂本くんでトイプードルはおはぎちゃん。そしてセキセイインコはハムたろうちゃんです。何故ハムたろう?
他にもミニブタのよしぎゅうちゃんや双子チワワのプログレくんとオルタナくんが個人的に気になるところではありますが、この様に一般的に名付けられるだろうペットの名前とはちょっとちぐはぐさを感じる名前のペットがこのどうぶつ病院にはやってきています。なんでしょう。町で流行っているんでしょうか。
しかし、この野村ロマネス子さんの『ちぐはぐな、ペットのお名前』という性癖の面白い部分は、そのペットの名前が「ちぐはぐである」という事が読者が理解できていないと理解が出来ない性癖であり、「ちぐはぐである」という事に気付いて「ちぐはぐ」な部分になんらかの反応を示した時点で『ちぐはぐな、ペットのお名前』という性癖に共感を示したという構造になっている所です。
例えば三毛猫は菊蔵やセキエイインコにハムたろうと名付けるのが当たり前な環境に育った方はこの作品を単なるどうぶつ病院の一日としか読むことが出来ず、野村ロマネス子さんの『ちぐはぐな、ペットのお名前』という性癖に全く共感が出来ないのです。
この部分は本当に面白いですね。
性癖も大多数が共通認識からの派生による物なので、世の中の全員が全裸だったら野外露出という性癖は存在したとしても共感して貰えないんですよ。
この辺りは語ると長くなるので作品の講評でやる事では無いのですが、野村ロマネス子さんの性癖は奥が深くて研究し甲斐があると思います。
ただ、勿体ない部分として、二つ目の性癖である『ちょっと何かを超えてしまってるけど、活き活きしている人』が少しわかりにくい物となっているのが惜しいなと思いました。
最後のオチとして先生自身が飼っている猫の名前が「櫻子と薫子」、子供達の名前が「きららとうらら」、妻の名前が「花子」で先生の名前が「太郎」と判明して、その名付け方は違和感があるんじゃないのかという終わりになっているのですが、前半のどうぶつ病院での『ちぐはぐな、ペットのお名前』の部分が作中の世界にも適応されているのかいないのかが分かりにくく、「作中世界がセキエイインコにハムたろうというちぐはぐな名前を付けるのが普通の世界」であるのなら、ラストの「先生たち一家の名前も普通」という事になり、そうするとその世界の中での獣医の先生は一般人の感覚を持っていることになるので『ちょっと何かを超えてしまってるけど、活き活きしている人』という性癖の『ちょっと何かを超えてしまってる』の部分が弱くなってしまうのではないかと感じました。
先生の『ちょっと何かを超えてしまってる』の部分が忙しくても飼い主のホットした顔が見えるからオッケー的な部分だとしても、その部分をもっと強調された方が性癖小説としての力は高まると思います。
一つ目の性癖が作品に対してとても面白い掛かり方をしているだけに、野村ロマネス子さんなら二つ目の性癖ももっと上手く作品に掛けれるのではないかと思います。とてつもない名作の性癖小説に化ける可能性がある様に感じました。
野村ロマネス子さんのこれからの性癖小説に期待しています。ご参加ありがとうございました。
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