23.ゆくかはの/田辺すみ

作品名:ゆくかはの

作者名:田辺すみ

性癖:川

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330656529789469


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 田辺すみさんも初参加の方ですね。

 沢山の方に参加して頂けるのはその分沢山の性癖を受け入れる事に繋がるのでとても嬉しいです。ご参加ありがとうございます。


 こちらの作品は性癖が『川』という事で大きくて水が流れる物をイメージしがちですが、作中の思い出の川はコンクリートで固められて水が少しだけ流れていて、川底(底と言いつつも水の厚みが全然ない)に沢山の藻が生えている、たまに雨とかで水の量が多いとコイやフナらしき物が上流から流されてきて水が減った後に無残に腹を晒して息絶えていることがあるという、田舎と呼ぶには少々発展していて、かと言って都会と呼ぶには余りにも遠い場所であり、生き生きとした自然ではなく無機質と死が香る開発された川の事でした。


 たった四行であの何とも言えない寂しい川を完璧にイメージさせられるのはとても高い性癖力の現れだと思います。やはり『川』が性癖なだけあって『川』の表現も上手なのでしょう。初参加の方ですが性癖表現者パッショナーの気配を感じます。

 『川』と言えば上流から下流へと水が流れてくることから一方通行の象徴として扱われる事が多いと思うのですが、下流へ行って新しい暮らしを始めれると示すだけでなく、上流へ向かう事で山などの自然へ還る事も出来る示していて、『川』は下るだけの物じゃないというメッセージは新しい発見を得させてくれました。

 特にこの時の海と山の説明に「向こうにずっと行けば海だ」「あっちにずっと行けば山だ」と、敢えて上下や左右で区別していない部分からもそういった『川』に対する田辺すみさんの思いが伝わってきて、本文中にも書かれている通り、「『川』は道標だ」という事に終着するんですね。

 そして最後は海へ行くか山へ行くかを選び、その先に「かえる」事で今ここにいる私自身も消え去ろうとされています。


 水が流れていなくとも『川』であり、生だけでなく死が漂うのも『川』である。

 池も人の手が入った人工池があるが、それは『川』の様に道標にはならない。


 性癖は同じ対象でも人によって感じ方や気になる部分が違うという良い参考になる作品で、自分が『川』に感じていた物とは違う『川』に対する性癖を教えてくれる素晴らしい性癖小説でした。

 是非とも色んな方に読んでいただきたい作品だと思います。ご参加ありがとうございました。

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