22.本尊欠けたか兄■し/目々

作品名:本尊欠けたか兄■し

作者名:目々

性癖:心霊スポットにまつわる噂

性癖:落ち度と悪意のない兄

性癖:こじらせた弟

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330656385864195


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 今回の第五回性癖小説選手権の一番槍だった目々さんの二作目です。

 一作目ではミステリアスな先輩の話を投稿頂きましたが、今作はミステリアスというよりもホラー寄り名な謎のお話を頂きました。


 状況的には部活の先輩が後輩を食事に連れ出して最近悩みがないかを聞き出しているところから始まるのですが、悩みではなく自分がいかにしっかりしていないかの説明と、自分がしっかりしていないからこそしっかりしている兄が凄いという説明。そして、そこから始まる兄が心霊市ポットでしっかりしなくなってしまったから嬉しいという話。

 始まって暫くは性癖紹介に書いてある『落ち度と悪意のない兄』がいかに世間的に素晴らしい人間かと、兄だから弟の面倒を見る事なんか二本の足でまっすぐ歩くように当たり前の事だと思っているという説明が続くのですが、この『落ち度と悪意のない兄』の行動はいわゆる「やさしい虐待」と呼ばれるものに近く、施しを受ける側からしたらプライドを傷つけてしまう様な行為なんですよね。

 しかも自分には出来て当たり前の事だから他人にしてあげるまではいいんですが、そこで相手が成長させる余地を与えないで全部やってあげるというのは無意識の支配でしかありません。

 『落ち度と悪意のない兄』だからこそ、その優しさから来る行為を止めさせることが弟からは出来なくて受け入れるしかない。だって自分には出来ないのだから。練習しても出来ないんだから受け入れて当然。いやぁ、こりゃ屈託して当たり前ですね。

 そして、そんな何でもできて自分だけじゃなくて他者の事までやってくれている兄が「兄の家」という「兄という存在が何かをして心霊スポットになった場所」に行く事を報告してきた時に、どうにかなってしまえと思っていたら本当にどうにかなってしまって戻ってきて、それ以来「しっかりできなくなってしまった兄がしっかりしていない弟に頼らざるを得ない状況」になったのを喜んでいる。

 こじらせてますね~、見事に『こじらせた弟』です。しかも『こじらせた弟』になった原因は『落ち度と悪意のない兄』なのでどうしようも無い因果応報だし自業自得なんですね~。いや~、素晴らしい。とても素晴らしい複雑な兄弟の関係。

 『心霊スポットにまつわる噂』もある事無い事が書かれている様に思えて、この兄弟の事を考えると実際にどれもあったんじゃないかとさえ思えますね。


 今作は提示して頂いた三つの性癖の『心霊スポットにまつわる噂』『落ち度と悪意のない兄』『こじらせた弟』がそれぞれに絡み合う様に関わり合っていて、とても高度な性癖小説でした。

 目々さんは自分の性癖をどう作品に乗せて書いたらいいのかを分かっていらっしゃる性癖表現者パッショナーとして安定感がありますね。

 とても良い「二者の関係性」の作品をありがとうございました。次回作も期待しています。

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