21.そんな暇があるなら殴り合え/ぎざぎざ

作品名:そんな暇があるなら殴り合え

作者名:ぎざぎざ

性癖:無駄に長い詠唱

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330656469181902


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 ぎざぎざさんは今回初参加の方ですね。

 こんな酔狂な自主企画にご参加いただきありがとうございます!


 こちらの作品は題名がそのまま作品に対するツッコミとなっていて、魔法使い二人が魔法勝負をする時に性癖紹介に書かれている『無駄に長い詠唱』を行っていて、結果的に酸欠で決着が付くという物。まさに「そんな暇があるなら殴り合え」ですね。

 こういう本人達は真剣なんですが視点を変えたら笑っちゃう状況とか、メインとは全く関係ない部分で勝負が決まったりするのとかは個人的に大好きです。なんとなく90年代ライトノベル感がします。TRPGで設定の穴を見つけてそこを突くとか、そんな感じの。


 両者がやっていた『無駄に長い詠唱』が適当に言葉を発しているわけではなく、ちゃんと対比詠唱や対句詠唱や追加詠唱や二重詠唱や反復詠唱や並列詠唱と呼ばれる意味がある詠唱なのがとても良かったです。

 一時期は詠唱破棄や漢字に複数の意味を持たせて詠唱を短くするという作品が流行りましたが、やはり魔法には詠唱があって欲しい物ですし、その詠唱にもちゃんと意味が欲しいです。

 作品名である「そんな暇があるなら殴り合え」という突っ込みの為に色々と設定を追加されただけかもしれませんが、それでも単なる詠唱ではなく対比や反復なんかの「詠唱そのものにも意味がある」と示してからの「酸欠で決着」は本当に見事な流れでした。カッコよさで盛り上げておいてからの『無駄に長い詠唱』という辛辣なオチの魅力を見事に引き出せています。読んだ人全員が(確かに…)ってなりますもんね。


 という感じで、『無駄に長い詠唱』というお題での小説としてはとても面白かったのですが、『無駄に長い詠唱』という性癖を植え付ける為の性癖小説選手権の作品としてはやや方向性が違う感じがしました。

 性癖小説選手権は上手い作品や面白い作品が高評価を得るのではなく、読んだ人が提示された性癖を(こういうのも有りだな…)と受け入れることが出来るかどうかを評価対象としています。

 ぎざぎざさんの今作は「『無駄に長い詠唱』をしない方がいいのではないか」という『無駄に長い詠唱』を揶揄する形のオチに繋がってしまっている為、そうすると『無駄に長い詠唱』という性癖を肯定的に受け取るのは難しいように思われます。

 これが『無駄に長い詠唱』という性癖ではなく、『無駄に長い詠唱に拘って負けてしまう魔法使い』という性癖であったならば、今作の性癖小説選手権での評価は全く違った物になっていたと思います。


 とても面白い作品でしたので性癖小説選手権ではなく普通の自主企画でしたら高評価になっていたと思います。

 ただ、ぎざぎざさんからは『全体を一歩引いて見る』や『シュールレアリスムへのツッコミ』の様な性癖がある様に見受けられますので、提示する性癖の見直しを図るだけで性癖小説書きとして大きく化けるのではないかと思いました。

 ぎざぎざさんからは性癖表現者としての可能性を強く感じましたが、初参加故に性癖の提示の仕方の難しさがあったんだなと思います。

 出来ればまた次回もまたご参加いただけたらなと思います。ご参加ありがとうございました。

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