20.レンタル『×××しないと出られない部屋』/猫茶とすか

作品名:レンタル『×××しないと出られない部屋』

作者名:猫茶とすか

性癖:常に口元にたのしそうな笑みを浮かべている男

性癖:からかい甲斐のある可愛い男

性癖:なんかそういう関係っぽいけど別に付き合ってはない

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330656447742549


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 前回の第四回性癖小説選手権からご参加いただいている猫茶とすかさんです。

 前回では精神を弄る様な官能的な作品を投稿頂いた性癖表現者パッショナーの方で、今回も心を支配する様な素敵な作品を投稿頂けるのではないかととても楽しみな方になります


 今回投稿頂いたのは創作界隈で無くとも一度は耳にしたことがあるだろう「×××しないと出られない部屋」というタイトルその物な作品。

 この「×××」に何を入れるかの大喜利が幾つか行われていますが、題名はそのままストレートに「×××しないと出られない部屋」と書かれていて、作中ではなんと書かれているのか分からない所が面白いところです。

 入った部屋には寝心地良さそうなベッドとあれやこれやするのに必要な品々。愕然としてると閉まるドア。現れる部屋の説明。そして抱いてやるという攻めと慌てつつも諦める受け。状況証拠的には性行為か何かを強要されている様に見えますが、彼らも題名のままの「×××しないと出られない部屋」という説明だけを見て、状況証拠で「抱いてやる」という発想に至った可能性もあります。

 深いですね。さらっと読者に「×××」の部分の内容を二重に考えさせる構造となっています。これで性癖に『×××の中身を考えて勝手に悶えたり狼狽えたりする人』というのがあったら満点を出していたかもしれません。


 大筋としては『なんかそういう関係っぽいけど別に付き合ってはない』という関係の、口では反発しながらもなんだかんだで優しくて面倒見が良いからほいほい頼みを聞いてしまう『からかい甲斐のある可愛い男』の受けと、いろんな人にちょっかいを書ける節操無しだけど優しさを持ち合わせている『常に口元にたのしそうな笑みを浮かべている男』な攻めが部屋から脱出する為に「そういう事」をしようとしたらドアが開き、受けが出て行った後に攻めが全部分かってましたと言わんばかりの顔で今回の黒幕と会話をするという物。

 この二人のこういう時のやりとりが見たいという作者の願望がそのまま表れている様な作品で、性癖小説としてとても好感が持てますね。

 ちゃんと読者に二人の良さが伝わるように『常に口元にたのしそうな笑みを浮かべている男』のちゃらんぽらんさと『からかい甲斐のある可愛い男』がからかわれていて可愛い反応をしている様子が書けていますし、これだけ具体的に書いている様に見えて、実は肝心な部分の描写はハッキリとしないで読者の想像に任せる様になっています。

 この書き出し方は性癖小説のお手本にしてもいいレベルの物でしょう。性癖小説の書き方に迷ったらこの作品を見れば何かが掴める事間違いなしです。


 又、個人的にとても性癖小説としてのお手本にして欲しい部分が、色んな登場人物の名前とキャラクター性がいきなり出て来て当たり前の様に話が進んでいる部分です。

 説明無しに今までいなかったキャラクターの名前を出したりするのは初見の方からすると「誰が誰だか分からない」のという様に見えてしまうし、今、誰が、どのような話をしているか混乱させてしまうでしょう。

 しかし、性癖小説選手権では説明無しに書きたい部分だけを切り取って作品を書く事がOKとされているので、急に登場人物が増えようがマイナス要素にはりません。

 急に人が増えようが、急に場面が飛んでようが、急に輪廻転生して新しい世界で産まれて出会っていようが、何の説明も無しに性癖的に好きな部分を書き出して良いのが性癖小説選手権なのです。

 旦那が友人に抱かれているのをひそかに楽しみにしている伴侶とか、他人の迷惑を気にしないで自分の興味の為に実験をする美人とかとても気になりますね。こうして作品の事が気になってしまうのが性癖小説としてだけでなく、小説その物としての魅力に繋がるのだと思います。

 つまり、読み手が脇役のキャラクターの事も気になってしまうレベルで書いてしまっていいという事ですね。しかもキャラクターの詳細まで書かなくていいんです。

 それこそ本当に「ご想像にお任せします」という事。どんどん読者の想像に任せましょう。想像は性癖に繋がる素晴らしい行いです!


 短い文章でキャラクター性を引き出すのがとても上手い作品でした。。流石精神を弄る系の性癖表現者パッショナーの方。期待を裏切りません。

 最期を「ご想像にお任せします」で〆ているのも性癖小説的にポイントが高く、ご参加いただくのは二回目なのに既にベタランの風格が漂っていました。

 線癖小説選手権以外でも、その類まれなる性癖力を発揮した小説を書いて頂きたいと思います。

 ご参加ありがとうございました!

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