40.沈殿/草森ゆき

作品名:沈殿

作者名:草森ゆき

性癖:二次創作

性癖:暴力

性癖:拷問

性癖:男男クソデカ感情

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657565251431


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 第二回性癖小説選手権からご参加いただき、第三回では裏の性癖小説選手権である地雷選手権の講評を務めて頂いた草森ゆきさんです。

 地雷選手権の時はありがとうございました。参加者の方も読む側の方もみんな苦しんでいてとても残酷なイベントでしたね。


 そんな他人が苦しむ姿が大好きな草森ゆきさんの作品ですが、こちらは先に「暴力と流血注意」と書いておかなければいけない作品となります。さらっと読むには中々に重い『暴力』と『拷問』のシーンがあり、人によっては読む事さえきつい場合があるでしょう。しかし、そういった人を選ぶ作品こそ性癖小説選手権に相応しい作品でもあるので主催的には全く問題ありません。カクヨムから警告が来なければどれだけ暴力シーンがあってもOKです。どんどんやっちゃいましょう。


 大雑把な内容としては学生時代に両親が死んだ連れ語同士の兄と弟の『男男クソデカ感情』な内容なんですが、この作品の一番のポイントは性癖に『二次創作』と記されている事です。

 『二次創作』というのは元々ある作品のキャラや設定を使用して作る作品であり、ファンがその作品に対して抱いた感情が妄想だけでは抑えきれず、その溢れた思いを形にして原作にないエピソードを勝手に作り出してしまったという物です。

 つまり、『二次創作』は二次創作作者の原作愛や性癖が形を成した物であり、『二次創作』の存在自体が性癖と言っても過言ではないでしょう。

 そんな性癖としてかなり強火な『二次創作』と掲げた作品にて、一般的には嫌悪感を抱く相手への行為と解釈される『暴力』と『拷問』を愛情を持って向けているのがこの作品です。単に相手が気に入らないから『暴力』や『拷問』を行うのではなく、義理の兄弟を兄弟として結びつける関係性として『暴力』と『拷問』が行われています。作中で義弟が「誰よりも好きで誰よりも嫌い」という詩的な一文を使って表現している通り、好きと嫌いのどちらの一番も義兄が占めているんです。その発端も義理の兄が過去に発した何気ない祝福と呪いの一言ですし、正に愛です。とても素晴らしい『男男クソデカ感情』。これから毎日義兄を殴りましょう。

 又、この作品は義理の兄弟の関係の作品なんですが、その「義理の兄弟だけ」という状況にするためにさらっと両親を事故死させている部分に草森ゆきさんの性癖に対しての潔さを感じました。舞台を整える為に躊躇なくキャラクターを殺す事が出来るのは一種の才能です。その辺りからとても文章が生き生きとし始めていたので、「義兄弟が二人きりになってもおかしくない状況の為に両親を殺すのを我慢していたんだな」というのが良く伝わってきました。よく我慢しましたね。ナイス性癖!


 義理の兄弟が二人で残された事と、義理の兄の子供の頃の無邪気な呪いの言葉と、義理の兄が勝手に背負った呪いとで、それぞれが複雑に絡み合って兄弟二人で様々な感情を補完し合い、両者の間には誰も入れないし入れさせないという強い意思を感じる素晴らしい作品でした。この二人は血が繋がっていないのだし結婚しちゃえばいいんじゃないでしょうか。少なくともそうすれば「本当の家族」にはなれますからね。


 草森ゆきさんの今作は『男男クソデカ感情』から始まる『暴力』と『拷問』がメインのとても濃密な『二次創作』の作品でした。

 これ程までに濃い性癖を曝け出す事は二の足を踏む方が多いと思うのですが、草森ゆきさんはそこをズドンを踏み締めて「この暴力を見ろ!」とされています。この堂々としたアピールは一介の性癖表現者パッショナーとして尊敬しますね。他人がどうとかではなく自分が書きたいから書くという二次創作の原点が良く分かる作品だったと思います。ご参加ありがとうございました。

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