53.仮面の戦士/津川肇

作品名:仮面の戦士

作者名:津川肇

性癖:苦しみながら戦うヒーロー

性癖:平成初期ライダー作品の暗さ

性癖:肉弾戦

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657916775400


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 津川肇さんもご新規の方ですね。ご参加ありがとうございます。


 投稿頂いた作品は正しく性癖小説と呼べる「性癖が込められたシーンを抽出した作品」で、800字弱という短い作品ながらも提示して頂いた『苦しみながら戦うヒーロー』『平成初期ライダー作品の暗さ』『肉弾戦』の三つの性癖がぐっと凝縮されています。とても良い性癖小説ですね。思わず手を叩いて喜んじゃいました。

 なにを隠そう自分は平成初期ライダー世代ですので、津川肇さんの性癖はとても良く分かります。いいですよね、平成初期仮面ライダー。

 作品全体の雰囲気は伝わる人には伝わると思うのですが、クウガで男子高校生を殺害するゲゲルを完遂しそうになった敵の時の空気感に近いです。方向性は少し違いますが、助けれなかった悲壮感、関わらせてしまった後悔、そしてこんな事をしでかした敵と全ての原因である自分への怒りがとても良く現れています。平成初期のライダーはこういった「力があるはずの自分なのに力が及ばず助けれない相手が居る事」や「自分が存在するから親しい人に迷惑が掛かる事」に悩んでいて、その部分が『苦しみながら戦うヒーロー』という単なる暴力で解決するだけではない等身大のヒーロー像として魅力的だったんですよね。平成後期仮面ライダーではそういう『平成初期ライダー作品の暗さ』よりも娯楽作品としての楽しさが増えていて少し寂しさを覚えますが、それは時代の流れと需要の頻度からして仕方がない事なのでしょう。だからこそ、こうして性癖小説として自身の好きな物を自作する姿はとても素晴らしい事です。ビームや派手なエフェクトのかかった必殺技で無く『肉弾戦』で相手を倒す哀愁が漂う姿も平成後期仮面ライダーや令和ライダーでは中々見れない姿です。いいですね。もっと性癖小説を増やしていきましょう!

 と、正直なところ自分も好きな性癖だったのでかなり贔屓目に見てしまっていますが、津川肇さんの今作は性癖小説としてとてもレベルが高くて性癖の表現力の部分については何も言う事がありません。完璧です。ただ、一つだけ主催としての我儘を言うとすれば、余りにも津川肇さんが『平成初期ライダー作品の暗さ』が好きすぎるせいか作中で「ベルト」「バイク」「変身」「仮面の戦士」と、仮面ライダーの要素が沢山出てしまっています。ここまで来るとオリジナルの仮面ライダー作品として扱ってしまってもいいんじゃないかと思うので、いっその事開き直って「仮面ライダーです」と主張をしてしまうか、要素は似ているけれどまったく違う「オリジナルの変身ヒーロー物」という作品と主張するかのどちらかに振ってしまっていいのではないでしょうか。

 個人的には今作の為に設定されたと思わしき「鉄の皮膚」と「生体鎧」というワードがある事ですし、二次創作の枠に収まらずにオリジナルへと昇華させてもいいのではないかと思います。仮面ライダーは継承の物語でもあるので、津川肇さんが『平成初期ライダー作品の暗さ』と『苦しみながら戦うヒーロー』を継承して『肉弾戦』で戦うヒーロー作品を作り上げるのもヒーローサーガの一つであり、平成初期仮面ライダーから再出発した仮面ライダーを含む等身大ヒーローの系譜に連なる事になるはずです。


 好きな性癖の作品なので過度な期待をしてしまったのかもしれませんが、それだけ津川肇さんの今作は素晴らしい物でした。性癖の表現力が高く、魅せたい部分だけを抽出する性癖小説としての体裁も上手く活用されています。

 是非ともこれからもどんどんヒーロー物の作品を書いて頂きたいですね。ご参加ありがとうございました、

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