52.最期の晩には温すぎる/@kajiwara

作品名:最期の晩には温すぎる

作者名:@kajiwara

性癖:普段は穏やかだけど実は……な過去を持つ系なキャラ。言わば舐めてた相手が、的な

性癖:狂気的だが変な所筋は通してる悪役

性癖:エグい手段も辞さないプロ同士の近接戦闘

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657753922796


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 @kajiwaraさんは初参加の方になりますね。性癖小説選手権へのご参加ありがとうございます。


 こちらの作品は小さなレストランの店長であるイケオジが実は殺し屋で過去に勤めていた組織から来た殺し屋とバトルをするという物で、本編の殺し屋との接触が始まるまでのレストランの料理の描写、客の幸せそうな家族、恋人と喧嘩した従業員、その仲直りの手助けをする店長と、幸せ部分の描写が丁寧なので絶望部分の描写も生きるという落差を上手く使った作品です。

 特に今作はサブキャラクター周りの描写に力が入っており、幸せ部分は作中料理のオムライスやクリームブリュレを客の家族がおいしそうに食べているのはとても微笑ましいですし、厨房ではアルバイトの男性が次の仕込みをしていて彼女と喧嘩したから早く帰らずに残業をしようとしていて、主役であるイケオジと関わっている人がいかに幸せかというのを現わしています。そして絶望部分も「幸せ部分冒頭で現れた女の子が誘拐された事」と「店長が返答を間違えた事でボストンバッグから流れる血」という断片的な情報で最悪な事がイメージ出来るようになっています。いやぁ、人の感情を弄ぶのが上手い!!(褒めてます)

 しかし、これらの丁寧な描写はお話のメイン部分ではなく、飽くまでも『普段は穏やかだけど実は……な過去を持つ系なキャラ。言わば舐めてた相手が、的な』という性癖の為の下準備でしかないんですね。幸せそうな家族も働き者のアルバイトも、なんならイケオジを襲撃に来た悪党も全て性癖の為に消費される存在なんです。なんという贅沢。良いですね。それでこそ性癖小説選手権です。ナイス性癖!

 そして頭がおかしくなっていてもアルバイトとその彼女に乱暴をして連れて来たチンピラを容赦なく撃ち抜く悪役。最終的に女の子に手を出してない事からも精神的な面は置いといてイケオジ以外に何かしようとするつもりはないのが良く分かるのですが、イケオジにその気になって貰う為ならアルバイトを殺してもいいよねと判断する辺りが『狂気的だが変な所筋は通してる悪役』っぷりが良く出ています。目的の為に必要無い事はしないけれど必要があるのならばするという割り切りの良さがいいですね。また、この『狂気的だが変な所筋は通してる悪役』という性癖は最期に死んだ政治家にも当てはまるのだろうと思います。ネズミと呼ばれる悪役がイケオジに手を出したことを驚きはしましたが、自分は父親から受け継いだ基板をそのまま使用しているのだからイケオジが自分を殺しに来たことも許容しなくてはいけないという様な覚悟を感じました。勧誘は勧誘でするけれども、取り乱して逃げるようなことはせずに悪役議員として死んでいったという感じです。

 悪役との最後の『エグい手段も辞さないプロ同士の近接戦闘』というバトルシーンもタオルや厨房にある道具を使った動きや潜り込む描写が丁寧で、様々な場所で性癖の為ならば細かなな描写も手を抜かないという意気込みを感じます。


 @kajiwaraさんの作品は見せ場に辿り着くまでの描写が丁寧で、まるで下ごしらえをしっかりとしている料理の様な作品でした。細かい部分にも気を配り、それでいてメインの部分は大胆という、謀ったかの様にレストランで提供される料理の様な作品す。イケオジの外見は読者に任せるというのも性癖を推しながらも読者の好みに合わせる嬉しいポイントですね。

 性癖的にはよく見るというか共感する人の多い性癖でしたが、これだけ丁寧に提供されているのは珍しいのではないかと思います。今後もその手を抜かない丁寧な作品作りで性癖を調理して頂けたらなと思います。ご参加ありがとうございました。

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