35.ファム・ファタールが現れない【短編】/柏望
作品名:ファム・ファタールが現れない【短編】
作者名:柏望
性癖:置いてかれること
性癖:通じてしまった秘密
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657296296895
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柏望さんは今回初参加の方になりますね。個人主催で性癖を主張するという変わった自主企画にご参加下さりありがとうございます。
願望がタイトルになったこちらの作品は読んでいて心が痛くなるというか、「小説を書いていたけれど書かなくなった人」と「小説を書ける人を目指していた人」の別れの物語みたいな物で、素人小説書きなら何人かの人がナイフや釘で刺されている様な痛みを感じる作品となっています。
もうこの時点で「読者の心に影響を及ぼしている」という部分が個人的に高評価ですね。性癖小説選手権の目的である「読者に性癖の良さを知ってもらう」という物も読者の心に影響を及ぼして性癖を受け止めさせる行為であるので、この「読者の心に影響を及ぼしている」という事が出来ている作品はそれだけで性癖小説になり得ます。
また、そもそも提示されている性癖が『置いてかれること』となっていて、物語の本筋的には「小説を書ける人を目指していた人」が「小説を書いていたけれど書かなくなった人」に人生的に『置いてかれること』が性癖と読み取れるんですが、逆に「小説を書いていたけれど書かなくなった人」が「小説を書ける人を目指していた人」に夢を追う事に対して『置いてかれること』が性癖とも読み取れます。そうなると性癖である『置いてかれること』が「小説を書いていたけれど書かなくなった人」と「小説を書ける人を目指していた人」の両方に掛かってくることになり、小説投稿サイトに投稿をしなくなった人でも、現在も投稿中の人でも、どちら側の読者にも読者の心に影響を及ぼしている」作品となる訳ですね。性癖の使い方と魅せ方が上手い。
『通じてしまった秘密』というのも、二人がそれぞれに相手に『置いてかれること』を感じている原因と繋がる相互関係となっていて、性癖同士を掛け合わせて相乗効果をもたらしています。通じない方が幸せだったのに、長年の付き合いであり、お互いに認め合っているからこそ言わなくても通じてしまう物があるんですね。
ファムファタールの女を敵と認識しながらも自分にも表れるのを待っている部分も併せ、全体的に二律背反に対する性癖をも感じます。
憧れから始まったものが時間の経過とともに冷めてしまうというのは往々にしてあることですが、やはりこういった相手がいる関係性で片方が冷めてしまうのは心臓がキュッとなりました。
小説を書いた事がある者として、「小説を書いていたけれど書かなくなった人」と「小説を書ける人を目指していた人」のどちらになるのが幸せなのかというのを考えさせられる作品でした。いや~、性癖の使い方が上手い。ご参加ありがとうございました。
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