36.Heaven, O Heaven /故水小辰

作品名:Heaven, O Heaven

作者名:故水小辰

性癖:顔の良い男と顔の良い男がクソデカ感情をする話

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330657294956599


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 以前は「小辰」さんというお名前で活動され、今は「故水小辰」と二文字足された名前を使用されている故水小辰さん。第三回性癖小説選手権からご参加を頂いている方で、男同士の関係性と強い感情が特徴的な作品を書いていらっしゃる方です。

 今回も提示されている性癖からして『顔の良い男と顔の良い男がクソデカ感情をする話』と、ご自身の性癖を良く分かっていらっしゃいますね。性癖に素直な事は良い事ですよ。ナイス性癖!


 作品としては天使と悪魔が「追う者と追われる者」というお互いにお互いを求め合いながらも立場や役割のせいで素直には分かり合えず、そのまま立場や役割のせいでお互いにおかしくなってしまうという物。「殺す筈だったのに殺せなくなった天使」と「殺して欲しくて懇願する悪魔」という確実に破滅に向かっていく共依存スパイラルな関係性が刺さる人にはめちゃくちゃに刺さるニヤニヤとしてしまう内容でした。

 最初っから自分の感情を理解して我が儘に生きる悪魔がとても悪魔らしくて良く、天使は自身の感情が何なのかに最後に気付いてそれを選んでしまうというシチュエーションも天使らしくてとても良く、それぞれの悪魔と天使というキャラクター性を上手く扱われているなと思いました。同じ目的に辿り着くとしても考え方や立場が違えば過程や得る物も違うんですよね。

 何気にローマの時代から現代までと作中でかなりの年数が経過しているのも人外らしさが現われていて良かったですね。そんなに長い間一つの任に付きっ切りで神様から怒られたりしないのかとも思ったんですが、きっと神様なので全てを予測されていらっしゃったのでしょう。結果的に悪魔を縛る鎖が出来たわけですから問題無いですね。そこに至るまでに何人かの人間と一人の天使が犠牲になってますが、それはまあ尊い犠牲だったのでしょう。


 提示された性癖はシンプルに『顔の良い男と顔の良い男がクソデカ感情をする話』という物だったのですが、他にも話の中から「自分勝手な奴に言いくるめられて自分の気持ちに気付く真面目な奴」のような、普段は自分自身を押し隠している者が普段から自分をさらけ出して生きている物に感化されて自分に正直になるという解放の性癖を感じました。

 一言で言うと「ギャップ萌え」が近いのかもしれませんがちょっとニュアンスが違いますね。難しく言うと「堕落」とか「堕天」が近いのかもしれません。しかし、キャッチコピーは逆に「君を天に連れて行く」なので天使側は全く悪い事と思っていないんですよ。素晴らしいですね。本人が善意のつもりで行う事なので「堕落」とか「堕天」にはならないんです。悪魔も天に登る気持ちと言っちゃってますから、この場合は「昇天」が正しいのでしょうか。堕天萌えと昇天萌え。宗教は奥が深いですね。


 メインの登場人物が二人で分かりやすく、尚且つ正反対であるはずの二人がくっつくまでの過程を魅せてくれるという分かりやすく参考になる短編性癖小説でした。

 性癖小説としてはここで終わってしまっても全然OKなんですが、この後の二人が肉体関係を盛ったらどうなるのかとか、二人して神様に会いに行ったときにどんなことになるのかとか、その後の展開も気になりますね。

 とても良いクソデカ感情話でした。ご参加ありがとうございました。

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