55.オーバーサイズ・スペア/押田桧凪
作品名:オーバーサイズ・スペア
作者名:押田桧凪
性癖:未練
性癖:恋愛ドラマの第7話
性癖:呪いやすい性格
性癖:どんな言葉でも一回も気安く愛とか言わない人
性癖:なんの根拠もないのに恋や愛と結びつけてしまっているもの
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330656251838832
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連続で投稿頂いた押田桧凪さんの二作目です。
こちらも一作目と同じ様に最後まで読み進めていくとタイトルの意味が分かる様になっていて、押田桧凪さんの作風が現れている作品となっています。
作品全体の内容は性癖にも書かれている『未練』が詰められており、なんらかの恋愛関係があった後の場面というのが『恋愛ドラマの第7話』っぽさを現わしています。
恐らくは全部で12話1クールのドラマのターニングポイントという事なのだと思います。主人公である女性が今まで好きだった相手の行動と感情の向き先が自分では無いと気付き、それでもそういう相手の行動が愛おしく見えてしまっていたと未練たらたらです。もしかしたら誰にでもやっていた行動かもしれないけれど、一緒に居た時の様々な行動がその時の主人公には『なんの根拠もないのに恋や愛と結びつけてしまっているもの』として見えていたと自白していて、その語りによって相手が『どんな言葉でも一回も気安く愛とか言わない人』だというのも分かります。もしかしたらお互いに『どんな言葉でも一回も気安く愛とか言わない人』だったのかもしれませんね。愛の向け先がお互いにズレていたからこそ、こういう結果になってしまったのかもしれません。いいですね。こういう最初に発覚するズレこそ恋愛作品の楽しさの一つであり、それが爆発して本人が自覚するのが『恋愛ドラマの第7話』なのでしょう。押田桧凪さんの性癖に「すれ違いから発生する感情」の様な物を感じます。よく人間を見ていらっしゃいますね。ナイス性癖!
そして終盤に差し掛かるところで登場する「厚底ブーツ」と「合鍵の合鍵」と「自分自身が誰かのスペアだった事」。押田桧凪さんのお得意の作中の意味の分かるタイトルの回収ですね。「厚底ブーツ」はサイズが合わないという事が主人公宛のプレゼントでは無かった可能性があって「オーバーサイズ・スペア」だと読めますし、「合鍵の合鍵」も使う必要が無く身の丈に合っていない部分が「オーバーサイズ・スペア」という事に読めます。となると、最後の「自分自身が誰かのスペアだった事」については恋人からスペアとしての期待に応えれなかった部分が「オーバーサイズ・スペア」なとも読めるんですが、個人的には逆に「彼女自身の愛が恋人に釣り合っていなかったのに恋人はスペアのつもりでいた」という意味での「オーバーサイズ・スペア」ではないかと思います。行ってきたことは間違いではないけれど正解じゃない生き方だと気付き、未練を残して新しい生活を始めようとする主人公こそが「オーバーサイズ・スペア」という方が詩的な感じがしてきて好きです。
釣り合っていないからこそ『呪いやすい性格』にもなってしまうのでしょうが、そこは『恋愛ドラマの第7話』という事で最終話までに新しい恋を見つけて欲しい物です。
今作は押田桧凪さんの人の感情のすれ違いを多分に含んだ性癖小説としても面白いのですが、そのまま失恋ソングの歌詞としても使える程の詩的な物を感じました。
詩は文章よりも短い文、作者の思いが凝縮して詰まっている場合が多い物です。そして込められた思いが強い程人を引き付ける魅力を持ちます。
押田桧凪さんの作品は次で三作目になるのですが、次はどんな性癖を魅せて頂けるのかとても楽しみですね。
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