第31話 英雄⑦
振り返るとクスィの視線は前方を向いていて、それを
「……有り得ない」
ボロボロのマフラーと着物が風に
それを
その先に
光が
「なんで……なんで、
心を恐怖が埋め尽くす。自らの身体から
そして男は周囲の
恐ろしさから体勢を崩しかけた僕をクスィの手が支えた。
「限定的とはいえ、彼は開かれた
「
その横に二体の人形が
彼女たちの役割が理解できないでいる間にも戦いの音は続いていた。
それでも男は一瞬も止まらず。周囲の
「そんななりではどちらが人形か分かりませんね」
「安心してください
言い聞かせるような優しい声。その正しさを示すように
それでも恐怖は消えなかった。男の周囲には
だから振るわれる
男は刀を振り切っている。たとえその一撃で終わらなかったとしても、続く
でもそうはならなかった。男は片手を伸ばすと宙を舞っていた
そして
「
そう考えている
首を
「……くるな、くるな、くるな、くるな!」
必死に身体を動かして、鞄の中にある銃を取り出そうとする。けれど何かに引っかかったみたいに銃は抜けず、
「
視線の先で振り向いたクスィが
泣きそうになりながら
その指先が横に
二人の少女が押し込まれる
大きく振られた二本の
高音の
一瞬で男との距離を詰めたクスィが跳躍し、振り上げた二本の
地面に突き立てた
それを受けた男が圧力に押されている内に再度身を
強すぎる光が目に焼き付いて残像を作る。はっきりとは分からないが、クスィが押しているように見える。二本の
男はすぐに再生しているが、二人の損傷の度合いが違う事は希望だった。連続する二本の
飛び散った液体の奥にクスィの姿を探した瞬間。再び
「クスィ!」
「大丈夫です」
僕の叫びに平静な声で答えたクスィは体勢を
二本の
武器の破壊力はクスィの方が上にみえる。広範囲に
細く白い足が
見ればクスィの靴、その
それを
それをしっかりと握りしめる。けれど高速で立ち回っているクスィを避けて男にだけ当てる自信がない。首筋を汗が
振り下ろされた
思わず上げた何度目かの悲鳴に今度は答えがない。放物線を描いて落ちていく小さな身体。それを追って男が駆け出す。
「やめろ!」
銃を抜く事も忘れて叫んだ視線の先で、クスィが最後の抵抗を
刀でそれを受け止めた男の足が
一瞬で周囲に満ちたそれが高速回転している
息を
その中心めがけてクスィが引いていた
それでも男は
互いの
男が一瞬でも
クスィが突き出した
状況は
男もクスィも動けない今ならできる。今なら避けられも受け止められもしない。撃てばあの男は死ぬだろう。それに対する
何も出来なかったあの時とはもう違う
殺す。
殺す。
殺す。
殺す。
直進した
「なん、で……」
意味が分からなかった。絶対に勝てた
「それは、人を殺す為に与えたものじゃ、ありません、よ」
口元から
「すみません。
さっきまでクスィの傷口を再生させ続けていた
そうしている
それが
「嫌だ、君が必要なんだ。僕には君が!」
目の前で起きている事を止めたくて叫んだ。そう叫べば、持ち直してくれるんじゃないかと思った。
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