第24話 もしもあなたが世界を壊してしまうのだとしても③
「ごめんなさい」
不安だという事が伝わってしまったと思って
「ごめんね。謝らなくちゃいけないのは、私の方なのにね」
母さんの声は、少しだけ
「これからは、もうそんな思いさせないから。私が守るから」
「僕が
そんな事を口にしたのは、僕はきっと
それを想像して身体が
「もしも、けいとが
僕の
病院を抜け出してからは連日、クスィの指示に従って居場所を変えながら人目の付きにくい夜に
「僕は母さんを助ける事ができなかった」
窓から差し込んだあの日と同じ
「目の前に居たのに、何もできなかったんだ。崩れてきた天井の
母さんは危ないからやめてって僕を抱きしめて、大丈夫って繰り返して、でも、そうしている間にもその身体からは血が流れ出していたから、だから全然大丈夫じゃなくて、早く助けなきゃいけなかったのに母さんは僕を離してくれなかった」
あの時、台所から転がってきたのだろう包丁が広がる
「最後に母さんが口にしたのはずっと僕を守るって言った約束を守れない事に対する謝罪で、でもそんなのどうでもよくて、守ってくれなくてもただそばにいてくれればよかったのに……、助けたかったのに……、僕にはそれをするだけの力が無かった」
クスィは黙っていたけど、そっと手を握ってくれて、それが聞いているという事を僕に
「全部が終わってしまった
すぐに舞台の奥から笑いながら母さんが現れて
急に胸が苦しくなって、あの時は少しも流れなかった涙が
「分解される母さんの骨を宝石に変える事もできた。でもそれにはお金が必要で、そんなお金はなかったから少しだけ
小さな容器に入れられた
心臓の辺りに
天国に行ったんだと
でも母さんよりも先に天国に行った
それともそこは圧倒的にこの惑星と
ずっと考えているのに答えが出ない。いや、本当は分かっていて、ただ認めたくないだけなのかもしれない。
涙を
「
「初めはそうだったかもしれない。でも今は違う。母さんのことが無かったとしても僕は……」
誤解して欲しくなくて、
「
あれから
あれから僕たちは三つの
実際に
だから僕は出来るだけ多くの人形を銃で倒して、クスィの負担を減らそうとしたけれど、それにどれだけの効果があったのかは分からない。少なくともクスィの調子が良くなっていない事は確かで、何度問いかけてもクスィは自分の
「
僕が
「
友達になったのは梅雨の時期だったな。外は雨が降っていて、ほら、
「そんな事で?」
「ああ、嘘っていうか冗談のつもりだったみたいなんだけど、あの時の僕にはそれが
だから
全部
あの時、
「何とか呼び捨てにして許してもらったんだけど、僕の様子を見た
「何をお願いしたんですか?」
「その、……友達になってほしいって」
口にして恥ずかしくなる。
「勇気を振り絞って言ったんだよ。でも、
もうそうだと思ってたのにって言ってくれた。友達だと思っててくれた相手に友達になって欲しいって言うなんて
手を握った時。でもこれで願い事は使っちゃったから、
それが始まりで、あれから何度も怒らせたり
「
聞き終わったクスィがそんな事を言ったから
「でも、
これまでの事を思い出して
「直接聞いてみたらいいじゃないですか」
「そんなこと……」
「答えは
「それは、そうだけど……その前に、もう許してもらえないかも」
「もしそうなら何度も連絡を取ろうとはしないでしょう。怒ってはいるかもしれませんけどね」
少しだけ生まれた希望を、続けられた言葉が
「全部終わったら、謝って話せばいいのです。きっと許してもらえますよ」
「そう、かな?」
「人の使う言葉は
負い目を感じているのなら、なおさら
「そうだね。……そうだ」
クスィの言葉にいつか
「例えるなら人は本のようなもの。世界という巨大な
だから、一目で見て分かるほどに自信があるのでもない限り、自分から中身を見せていかなきゃならないんだよ。そうじゃなきゃずっと知ってなんかもらえない」
「もしもそれでうまくいかなかったら?」
口にしてしまった言葉に怒られるのを
あれは、きっと引っ込み
「クスィは人形かもしれないけど僕なんかよりずっとしっかりした人間に思えるよ」
「人間について学習しましたからね」
「あのさ、謝る時にさ、その……
「そんな事をしたら、
「……ああ、きっとそうだ」
想像して少しだけおかしくなる。
それでも一人で立ち向かうよりはと思ってしまう所が、僕の
「
そう言うとクスィは胸元から
「持っていてください。
差し込んだ
「出来るだけ頑張ってみるよ。
僕の言葉を聞いたクスィは少しだけ
「私の管理者は
「クスィが必要だ」
そう言って笑みを返す。けれど喜んでくれると思ったクスィの顔は
「どうかした?」
「……いえ、何でもありません。そろそろ行きましょうか、世界を救いに……」
太陽が見えなくなって
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