第12話 管理人形②
天井を
人形の手に
「a……、ア……、……あっ」
動けなくなった人形の口が
「良かった」
突然
「
そう続けた人形は無表情で声すらも
「
「……違う」
反射的に答えた目の前で、人形の身体から
「そうですか、では
人形の言葉で意識が現実へと引き戻される。手も服もあの時みたいに
あの時そうしたように、
「何をしているのですか?早く避難してください」
冷静に
「君を助けたいんだ。このままなら君は……死んでしまうんじゃないのか?」
口にした単語に身体が震えた。
「いいえ、人形である私に死という
「それを、死というんだよ!」
返された言葉はある意味ではきっと正しくて、でもそれが許せなくて気が付けば声を
「何か方法は……そこから抜け出せないのか?」
必死に力を込めても
「その必要はありません。私が人を
「方法はないのか聞いてるんだ」
まるで
「此処から抜け出す方法ならあります。ですがそれだけの出力を
「
聞きなれない言葉を
「人形を管理する人間の事です。全ての人形は人間に管理されていなければなりません。ですが現在の私は管理者がおらず正常とはいえない
「それなら僕が管理者になれば助けられるのか?」
「
「僕じゃなれないのか?」
「回答不能です。現在私の記録は大部分が
「なら、不可能ではない訳だ」
人形の答えに希望を感じ、願いを込めながらその
「確かに、現在持ち得ている情報で判断する限り不可能ではありません。ですがそれを行った場合。
「それでもいい」
「ですが……」
「僕は君と一緒でなければ避難しない。このままなら僕は此処で自らを危険にさらし続けるぞ」
「……仕方がありません。ならばお手を、
「すみません。人形である私の身体は冷たいのです」
そう謝罪した人形は、いつの間にか
「これは?」
「
それで、貴方が避難する為に必要なのは私がここから抜け出す事で
人形の問いかけに
「その為には管理者であるあなたの
「
人形の声に
「分かりました。それでは少し
それを聞いて
「いや、ちょっとまっ……」
「抜けました」
「血が……」
それを見ても取り乱さずに済んでいるのは、それが
「
それよりも、まずはここを離れましょう。
近づいてきた人形が差し出した手。小さく
「待って、違う。出口はあっちだ」
「時間をかけすぎました。そちらはもう危険です」
その瞬間。入ってきた通路を
「
引っ張られながらそこに飛び込むと人形は速度を
「此処まで来れば、もう大丈夫です」
そう言われても、今も後ろからは
「あれは
僕の不安を
「ですが本来なら崩壊と再生は
「いいんだ。それよりも処置しなければならない
「ええ、けれど
「クストス?」
口に出すと、
「そうです。私の
「
「
初めて呼ばれた
「その、
「分かりました。では以後、
「分かった。何をしたらいい?」
「
「あれ?さっきの
気が付けばさっきクストスが指に通した
「防犯上の都合により透明化されただけです。
そう言われると指には
反射的に向けてしまった眼が
美術品みたいなその身体を見つめてしまってから、強烈な
「ではこれを持ち上げていてください」
投げかけられた声。出来るだけ直視しないように視線を戻すとその薄い
「
僕の反応を勘違いしたらしいその声に
「……あの、クストスは何の為に作られた人形なの?」
そう口にして、ばつの悪さを
「私は
「
「この下にある都市全体を管理している人形の事です。私はその予備ですから本体に何らかの問題が生じ、それを解決する為に目覚めさせられたのだと
今何が起きているのか
返された言葉に
「どうかしましたか?」
沈黙した僕を
「いや、なにも……ごめん、僕にはわからない」
「そうですか、気になさらないでください。私の通信機が故障しているのかもしれません。此処から出たら通信機のある場所に向かいましょう……
終わりました。もう
これ以上何か聞かれたらという緊張感と共に手を
「これで、
服を合わせ、
「いいえ、応急処置をすませただけです。ですが、とりあえず二週間ほどは問題ないでしょう」
「その先は?」
「完全な修理を受けなければ活動停止に
「……そんな」
この人形は危険だと訴える理性を感情が
「現状ではこれが限界です。けれど安心してください。適切な設備のある場所へ行けば容易に直す事が出来ます」
元気づけようとしてくれたのだろうその言葉は、状況を理解している僕にとっては絶望の言葉だった。
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