第39話 婚姻②
目を開けると見慣れた寝室の天井が見えた。けれど身体が
「おはよう」
聞こえた声の方に視線を動かすと
嫌がるでもなく
「どうなった?」
意識がハッキリしてくるのに合わせて、気になったのはそれだった。
「大丈夫。
「そうか……それは、良かった」
とりあえず役目は果たせたのだと
「本当にこれで良かったか考えてる?」
「人形の言葉が全て真実だったなら、俺は未来を閉ざしたのかもしれない。人にはできない理想的な世界を人形が本当に作れたのなら……」
「確かに、人形が嘘をついていなかったら、それはできていたのかもしれない。でも
それにそもそも、そんなのは
軽く
二人きりの部屋。初めて会った時にも似た光景の中、目の前にいる
「こうしていると、初めて会った時の事を思い出すね」
「俺も、そう思ってた」
そう答えると
「全部直してくれたんだ」
「どれだけ壊してもいいって言ったからね」
「ありがとう。……でも、もうきっと……」
笑いかける
「帰ってきてくれた。それだけで十分」
満足げにそう言う
「俺は結局、
生まれてきてからずっとそうだった。
「そんな事ない。
返された優しい言葉と一緒に
けれど同時に少しだけ
「ああ、それ?なんか
あいつらしいと思った。たぶん俺の体の事も知っていて知らないふりをしてくれていたのだろう。通信を
「それでいい。俺も見られたくない」
「私はいいの?」
「もう、何度も見られてる」
「そうだね。私だけが知ってる」
「
微笑みながらこっちを見ている
「ああ、突然通信が
冗談めかすように口にした
「これで二回目だ。初めて会った時も
今思えばあれで死ねたかは分からないが、あの時俺の手を止めてくれたのは
「そうか……そうだったんだ。それなら、何回でもそうなったらいいのに……」
「俺は、ヒーローみたいに成れたかな」
幼い頃にあこがれ、そうありたいと願ったもの。口にした俺に
「成れたよ。
自然と笑みが浮かんだ俺とは違い
それはきっとあの時
「本当は、全部治して、あげたかったんだけどな……」
「
「
その声には少しだけ怒りが混ざっていて、また言葉を間違えたのだと気付く。
「でも俺はさ、こんな風に生きられるとは思ってなかったから何処か満足してるんだ……ほら、
「
「そんな事はない。初めてあった時から
「……なに、それ」
面白くもない冗談に、こちらに視線を戻した
「……いい、人生だった?」
「ああ、
眠るたびに
「私も、
いつか悲しみを抱いた感謝の言葉も
「……
「何?」
呼びかけておいて続ける言葉に迷った。言いたいことは山ほどあるような気がするのに、探すと見つからない。
「こんな時はもっとこう、何かいい言葉を思いつくと思っていた」
「久那戸は口が下手だから、いつもと同じくだらない言葉でいいよ。そのかわり少しでも長く私のそばにいて、少しでも多く話してよ」
俺は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます