第38話 婚姻①
目の前に
一つ取って並んでいる文字の量に
手を乗せると
「ちゃんと読んでる?」
部屋の中を
「読んでるよ」
「嘘ばっかり」
書いてある事は全部、今度行われる
新しい
「あー」
何と言ったらいいか分からないまま口から
「何か言った?」
「いや……なんていうか、間違って、違う書類が混ざってたよ」
右手で
「ああ、気付いちゃったか、そのまま
驚くでもなく
「いや、そんな事をしたら、俺が……」
「俺が?」
「夫になってしまう」
「私と
「……なんで?」
思考が追いつかないまま、そう問いかける。
「なんで?って、結婚できるようになったのに、いつまでたっても
一瞬で記憶が呼び起される。確かにそう言われて、嬉しいよと返した。けれどそんなものは
「ああ大丈夫。書類上は
「いや、そういうことじゃなくて……」
「もしかして
「そんな事あるわけがない」
不安そうな言葉を即座に否定する。
「
言葉の途中で突然
「何を」
「本当の妹だと思ってる人の反応じゃないと思うけど、昔は抱きしめてもそんな反応しなかったよ」
「ずっと昔の話だ。今は状況が違う」
「どう違うの?」
「もう子供じゃない」
久しぶりに抱きしめられただけで、何年もかけて作り上げた
「そうだよ。もう子供じゃない。そこから目を
「俺はもう何年も生きられない。そうじゃなくても戦いで
それは絶対的な事実で、両親と博士を見送り俺さえも送る事になるだろう
「そんな事分かってる。だからこそだよ」
「ここは、このあいだ直したところ」
「ここは、その前に直したところ。こっちはそれよりも前。……続けたら何時間もかかっちゃう。いつも自分を犠牲にしようとするところ、出会った頃から変わらないね」
「別に戦わなくたって、開発中だった
その声は
「だって、このままじゃきっと後悔する。お父さんにも、お母さんにも、おじいちゃんにも、会いたいのにもう会えない。
視線を合わせた
「それにさ、そもそも
一番そばに居たいんだ。一番そばにいて、もう直せなくなるまで
「俺は
「不確定の未来と幸せ?」
「俺は
終わりが見え、性器まで
「それは正しくない。先天的な
どれだけ求めあっても、それは結局のところ
ついでに言えば
「子供は嫌いなんだ」
そう答えた俺を
「それは嘘。
その
「俺が今こうしていられるのは博士や
「そうかもね。でもそれは
けれどこの気持ちが、正しく愛と呼べるものなのかどうかがわからない。差し出された温かな手に
「俺は愛を知らない。正しいそれが分からない。そんな人間にはきっと誰も幸せにできない」
俺の泣き言を聞いた
「だったら私が、
全ての言い訳を
「俺は……」
「どうかした?」
呼びかけられて、初めて自分が
「いや、
俺の言葉を聞いた
つい口にしてしまった似合わない言葉は、自分が
二人だけの式。
そんな事を思い出しながら広げられた
「改めて、よろしくね
「その呼び方はやめよう。なんていうか、その、
「そうか、そうだね。これからは対等な関係として生きていくのだもんね。じゃあ、これからは
「もし裏切ったなら、その時はこれで刺し殺すから」
再び口を耳に寄せた
「そんなことしなくても、
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