第37話 人殺し④
受付に座っていた老人は、僕らを見て
上映室の中に客の姿は無く、いつもの席に座った
「どこに行こうとしてたの?言っとくけど、私が来なかったら通報しなくても
「これが
「だから、助けに行こうとしてたの?」
「何があったのかは
「僕にはクスィがそんな人形だったとは思えない。僕が連れ出さなかったらクスィは
僕の言葉を聞いた
「それは……そうかもしれない」
「それなら」
「でも、もしクスィが
「……そうだね……でも僕には、普通に暮らす資格なんてなかったから」
「そんな事あるわけがない」
強く言い切ってくれたことが嬉しくて、同時にすごく
「あったんだよ……」
クスィに渡されたアクセサリーをポケットの中で
「僕は……人殺しだったんだ」
「ひと、ごろし?」
冗談を聞かされたような顔をした
「僕には……、
「そう……そうだったんだ」
「でも、でもさ……私の知ってる
僕の腕を
「違うよ。僕は殺したかったんだ。あの時の僕は、あいつが動けない事を知っていて、それでも殺した。殺したかったから殺したんだ。忘れてしまったのはきっと、殺したのに何も解決しなかったから。殺していないから、母さんが救えなかったんだと思い込んだんだ」
「そうだったとしても」
「
「そんなのは嘘だよ。
「嘘じゃない。だって佳都は、本当はそんな事したくなかった
「違う。僕は殺したかったんだ。だからこの手で」
あの時、
「じゃあ
「そんな当たり前な事……」
「それを当たり前だと思えるなら違うんだよ。その選択肢が当然のように有る人とは違う。本当にそうしたいと思う人とも違う。それを嫌だと感じているし、駄目だと分かっている。だからきっとそれを引き
向けられた強い
「……そんなのおかしいよ。僕は人殺しだったのに、それでもそばにいてくれるなんて……」
「もし
「分からない。分からないよ。なんで
僕には何もない。
「そうかもね……でも、無理だよ。もうそんな選択肢はないんだ。正直に言えばね。
「そんなんじゃ
「かもね」
「私じゃ駄目かな?」
「もしも
「そっか……そうだね……。問題をすり替えようとしちゃった。ごめんね」
初めて見る
「これは、嘘泣きだよ」
無理やり作られた
「ごめん」
僕の謝罪に
「非常口から出れば、たぶん少しの間は
ポケットの中で
「それはね。位置情報を発信してるんだ。クスィが本当に安全か不安だったから
「なんで……」
「私がそれの情報を
それが事実だとしたら、最後の
「そんな私を信じられる?今だって
そう言った
「信じるよ。だって
そう言うと
「馬鹿だね
「知ってる」
答えながら笑って見せると
「持ってたんだ」
クスィが
「クスィが私の鞄に入れていたみたい。だからやっぱりクスィは
「もしもクスィの元にたどり着けても、クスィが
真剣な表情で付け加えられた言葉には
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