第27話 英雄③
初めて昇ったクチナワの上は想像していたのと違った。丸くなっていると思った上部は
それを観察している間にクスィが作り出した
「
呼びかけに振り返ろうとすると急に腕を引かれた。
「
クスィがそう告げる
「
手を引かれて走り出す。連続する着弾音の中、身を
反響した音に
でも鳥にしては
「クスィ、上だ」
叫んだ瞬間。身体が強く押された。体勢を
痛みに耐えながらクスィを探すと、落下してきた何かから伸びる
「クスィ!」
声を上げた時、クスィに傷を負わせた何かが
飛ばされながら空中で回転し、着地したのは
「待て!待ってくれ、あんたたちは勘違いしてる。通してくれれば全て解決するんだ。僕たちは人を襲う人形を止めようとしている」
今にも倒れそうなクスィの前に出ると男は足を止めた。
「違うな、勘違いしているのは君だ。その人形は世界を支配する為に行動している」
返ってきた低く
「クスィはそんな事しようとはしていない。世界を理想化しようとはしてないんだ。今まで人を襲ってきた人形の事でそう思っているのなら、それはクスィの所為じゃない。大戦の時に施された封印の所為だ。
「知っている」
男の声に続けようとしていた言葉が止まった。聞き間違いでなければ男は大戦が起きた理由だけでなく、今何が起きているのかも知っている事になる。
「それなら」
「だが、それを信じられると?」
生まれかけた希望を男の冷たい声が
「それを君に教えたのはその人形だろう?むしろ君は何故、そこまで人形の言葉を信じている。君は
「クスィはそんな人形じゃない。それをしたくないって言った。そんな事になれば僕達を危険に
男の眼光と刀に
「それは再起動に君が必要だからじゃないのか?
「違う、こんな事になってしまったのは僕がクスィにそうさせたからだ。自分の所為で人形の活動が活性化していると分かった時、クスィは僕に自分を壊すように言ったんだ。それで事態を収束させるって、あの時僕がそれを
「本当にそうだろうか?もしその人形が君には破壊できないと
そもそも人の知性を
男の
「実際、そいつの
男の言っている意味が分からない。
「……そんな
「無駄です」
不意に肩を引かれ、振り返るとクスィが立ち上がっていた。
「彼とは分かり合えない」
理解するために言葉を
「大丈夫ですよ。今の私は、この程度で壊れたりはしません」
その言葉が正しい事を示すようにもう
「クスィ、
口を
「私が足止めを指示したあの人形の事でしょう。私が手に入れたように、あの人形は現在までの正確な情報を持っていました。そこから考えれば、私が命令を書き換えた
クスィの目をじっと見つめる。その透き通った青の向こうに何かを探す。信じるに
「ですが……そうですね。彼の言葉は一部では正しい。此処で私が破壊されれば、事態はとりあえず収束するでしょう。あの時と違い
優しく問いかけられた事で
そう思えばいつだってクスィは僕に……そうだ、そもそもの切っ掛けは、僕があの日の光景をクスィに
「クスィ、
「分かりました」
一瞬とはいえ
「では
歩き出そうとするクスィの言葉に気が付く。
「それならこれが」
銃を取り出そうと伸ばした手をクスィが押し
「
人の命を奪う事になると言われて途端に手が動かせなくなる。
「でも……」
「
僕がクスィを壊したくないが
「もしも……もしも、そのために彼を殺さなければならない時は、私が……やりますから」
「ただ、一つだけお願いがあります。今のままでは彼に対抗できません。私の機能を開放しクチナワに流れている力の全てを利用したいのです。その為には
男を殺すとまで言ってしまったクスィはもうまともな人形とは言えないのかもしれない。それでも気持ちは
「
口にした瞬間、指環が光を放った。
「ありがとう
僕の肩から手を離したクスィが歩き出す。
「
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