第5話 咎人①
テレビの電源を入れると崩壊した街の光景が映し出された。響き渡る破壊音。
一瞬、画面の奥が白く染まったかと思うと、そこから伸びた光の線が高層ビルを切断した。発生する
映像が拡大されその発生源を
ゆっくりと開かれた口から高層ビルを容易く切断した
なんとか体勢を取り戻した
ヒーローが
そんなヒーローが嫌いだった。それでも幼い頃、暗い部屋の中で光を放つ画面をじっと見つめていたのは、そうしないと皆と一緒に遊ぶ事が出来なかったからだ。
皆と同じようにヒーローのかっこよさについて分かっているというフリをしなければならなかった。でもそれさえできたなら皆は友達だと言ってくれた。それはとても簡単な優しい結果を招く方法で、だから
奮闘している怪獣がヒーローの放った
連打が開始される前に玄関へ向かい、鍵をまわして扉を開くと、一気に入り込んできた冷たい風に身体が震えた。
「やぁ」
立っていた
「うん」
取りあえず
「寒いんだから早く入れてよ」
「ああ、ごめん」
思わず身を引くと
「おじゃまします」
用件を聞く前に、
「夕飯はもう食べた?」
「いや、まだ、というかどうしてうちに?」
ようやく問いかけると、しゃがみこんで靴を揃え直していた
「あれ?聞いてないの?
「……へぇ」
そう言いながら、動きそうになる視線を
「それで?今日は何を食べるつもりだったの?」
「あー、丁度、今から、何か作ろうかなって思ってたところ」
「本当に?」
「……うん」
「ふーん」
「さて、何を作ろうかな」
聞かせる為の独り言と共に、さりげなく戸棚の扉を閉め、流れるような動きで冷蔵庫を開くと、此方に寄ってきた
「食材は……一通りそろってるね。折角だから私が何か作ってあげよう」
冷蔵庫の中身を眺めた
「何か手伝おうか?」
迷いながらも一応口にする。
「無理しなくていいよ。……でも、それなら、片付けはお願いしようかな」
「わかった」
大人しくカレーが出てくるのを待つ事にして
映し出された入り口の近くには規制線が張られていて、その前に警察官が立っている。奥に止められているのは
「また、
教えようと思って顔を動かすと
「今更?朝にもやってたし、端末で確認したり誰かから聞いたりしなかった?」
朝は遅刻しかねないほどぐっすり眠っていたし、端末でわざわざニュースを確認する習慣はない。そして誰からもそんな話は聞かなかった。
試しに端末を開いてみると千歳の言うようにいくつも記事があがっていた。どうやら僕が知らなかっただけらしい。
「もうちょっと情報を仕入れるようにした方が良いよ。
それはたぶん、クラスの誰と誰が付き合っているというのを僕が知らなかった一件の事を言っているのだろう。周知の事実だったらしい二人の顔は浮かんでも名前が出てこない。僕の情報網なんてそんなものだ。中学の時点でクラス全員の名前を覚える事を
「大丈夫だよ。別に困ってないし……」
「まぁ、佳都らしいけど」
呆れたような声を聞きながら端末を机の上に置いて、ぼんやりとテレビを眺める。特に覚えておこうとも思わない情報が映し出されては消えていく。
「よし、完成」
思っていた通り、室内に食欲をそそるカレーの匂いが漂い始めた頃。
「わるいね」
「別にいいよ」
目の前に置かれたお皿を引き寄せながらそう言うと、
さっそくお皿の上に載っていたスプーンを
「どう?」
千歳はどうもそれが聞きたくて、自分は手を付けず僕が口にするのを待っていたらしい。
「うん。美味しい」
「ならよかった」
僕の返答に満足したらしい
口にした感想に嘘は無かった。
何度かスプーンを往復させた時、唐突に
「もう遅いから、食べ終わったら片づける前に送っていくよ」
「ああ、大丈夫。今日は泊まっていくから」
「え?」
返ってきた言葉に手が止まった、
「なんで?」
「
「いや、そうしても良いって……」
「いや、でも、
「大丈夫、連絡しておいたし、それに今日は二人とも家に居ないんだ。研究所で泊まりになるって、だからその方が安心かもねって」
「そう言ったの?」
「うん」
頷いた
「あー、でも。そうだ。そう。ほら、
「それも大丈夫。ちゃんとご飯をあげて、家の中に入れてきたから、今頃、お気に入りの毛布にくるまって自宅の警備任務にあたってる筈だよ」
「あー、そうなんだ。それは、良かった。でも泊まるのはどうだろう……」
「何?前も泊めてもらった事あったじゃん」
「いや、そうだけど、あの時と違って今日は
「だからちゃんと
「いや、無いよ。無いけど……」
「じゃあ、決まりね」
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