第44話 嘘つき
一度
「彼の作ったクスィとして私が、いや
「なんで?」
小さな指をしゃぶっている
「その問いに答えるのは難しい。政治的な失敗の結果だという人もいたし、医療技術がもたらした生存率の増加や長寿、それに
言葉の意味を思考し始めた僕に、
「人の社会はね、生物の本能が
その
そこからも分かる
「
映し出された
「
千歳の言葉は十分に理解できた。この世界にある全ての国、全ての人が、同じ正しさで行動できない以上。そうなってしまう。それはたぶん人がずっと繰り返してきた事だ。世界を何度も滅ぼせる
「でも人工的な人の生産を行えた国家群はある意味で
とにかく、世界中の国家がそのように動いた結果、減少に
映像の中では、今度は沢山の人が人形の
「人形が職を奪う、人形が愛を奪うと人々は言った。同じ先端技術を利用して人間を作り出す事で自分たちの思想や文化を守ろうとしていたのに、人形だけは
人形
「先頭に立っているのはね。
知っていれば
「人工的な人間の生成を続けた世界は生じていた問題を強引に
座り込んだやせ
「神が消えてなお存在していた愛という都合のいい言葉が取り払われ、命がその
そう彼は言ったけれど、そんな事は起きなかった。人は彼が考えていたよりもずっとウブで、結局あらゆる
「それで、大戦前後の記録が……」
「そう、残すわけにはいかなかった。真実を
「人は、
そう
「でも、それならどうしてこの国にだけ完全な形で
「ああ、それはただ
映像が消えて
「これで全部、大まかには分かった?」
「つまり
「そう」
良くできましたというような
「じゃあ
「まぁ、そうだね。そう言えなくも無いよ」
そう口にしながら
「それで、今までの事は、全部仕組まれていたって
「失望した?」
「いや、むしろ納得した」
ただ、そうだったのかと、どこか
「そっか」
「でもね。それは運命みたいなものじゃ無いよ。私達は環境を設定したけど。そこにある
悲しみが無ければ優しくなれないなら、争いが無ければ平和を
遠い昔に人類が勝利した
「人と敵対する事を選んでしまった
真っすぐに僕を見ている
「……嫌だ」
出会った時から何度も差し伸べられた温かいその手を初めて
「どうして?もし人を殺めてしまった事で、人と関係を持つ事に不安を
「違う。その手を取ったらきっと
「僕は
「それは本能の
「じゃあ、もうそれでいいよ」
叫ぶように
「良くない。全然よくないよ。全てを知った今なら分かる
けれど
「これが気に入らないなら人間を作ればいい。
「そうか、これも
「
「それじゃあ、世界に不妊症が広がっているのは」
「繁殖できない相手との愛を人が選んでいるから……人類の生殖能力は
「それなら、もしも親に成ろうとする人間が、どれだけ
「そう。私達はそれを
怒りが
「……ならどうして僕をクスィと出会わせたんだ。こんな事をしなかったら僕はきっと
「それは、
口を開けている方がカッコいいからと言った嘘も、
「実際、
「彼は人形じゃないよ。彼には彼の選択と物語があった。人の誰もがそうであるようにね。
「
それに
「今は誰が人形で、誰が人間か分かる」
「きっと全部が正しい
「そうかもしれない。でも僕が望んだ時に手を差し伸べてくれたのはいつだって
「それは偽物なんだよ。だからこそこの先で
「それでも」
言葉を
「
「そっか……」
小さくそう言った
「……どうしてかな?人は人を
いつもと変わらない表情をした
「それはたぶん、
「人が人を愛していたのは、人を愛したかったからじゃない。人でしか
このちっぽけな惑星の中で同種との争いさえ止められない人が、自らが作り出した問題を一つも解決できないまま、地球外に
「そこに加わった
「私達は間違っていると思う?」
「……わからない。だけどもし間違っていたとしても、
「そうだね」
それがたぶん、人よりも人を信じ、人よりも人を愛して、存在理由としている
「もしクスィと会う事がなかったら、こんな物語を与えられなかったら、僕は
「どういう顔をしたらいいのか分からない言葉だね」
「……ごめん」
「結局、すぐ謝るクセ、直らなかったね」
その正しい
「
「うん」
「僕を人と
「そうだよ」
「それなら、あの時と同じようにひとつだけ願い事を聞いてくれるはずだ」
それはたぶん、僕が今まで
「……いいよ。ただし、私が叶えられる事限定ね」
少しだけ
「僕を助けてくれていた全ての人形に
「幸せな役?」
「良く笑って、老いて、死んだ時に沢山の人が
これは、ただのエゴだ。
「
そう言って
「
真っすぐに
閉じられていた
「私と行くのですね?」
じっと此方を見つめ確認を求めたその声に
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