第8話 咎人④
立ち寄ったいつもの軽食店は時間が遅いからか
「ここは、僕が出すよ」
手を差し出しながら言ってみたけれど、
「いつも通り自分の分は自分で出すという事で、
「お釣りは良いから」
僕の言葉は無視され、千歳はきっちりお釣り分の硬貨を財布から取り出して机の上に置き、指で
目の前に置かれた硬貨を見ながら考える。今からチケット代を渡そうにも千歳は自分が
だから硬貨を財布にしまいながら中身を確認する。一万円札が一枚に千円札が七枚、それと硬貨が少し、悪くない。
「千歳はこの
「どうして?」
「良かったら、その、
千歳は表情を変えないまま首を
「いつもはそんな事言わないのに、今日はどうしたの?」
「ちょっと、今日は余裕があるんだ」
「わーい、嬉しい、それじゃあ……なんて言うと思ってる?」
感情のこもっていない
「本当は?」
これ以上嘘を重ねると、
「……お
「何の?」
「その……昨日、の」
思い出して消えてしまいたくなる。
「もしかして昨日の事で私が怒ってると思ってる?」
「それなら間違ってる」
そう断言されたけど、それ以外の理由が思いつかない。今までこれほど
「でも、……怒って、るよね?僕に……」
「
「……ごめん」
「
「それは、その……」
聞かれて言葉に
何か言わなければと思っている間に
「そうやってすぐに謝るのは
「それは……」
「私はさ、向き合って欲しかったんだよ。そうでなきゃ、それは
「……ごめん」
口にしてしまってからまた
「
「……言えない」
「そう、何も解決してないの、謝罪を金銭に
「わかった。本当に、ごめん」
今度こそ
「わかったなら、よろしい。頭を上げなさい」
その冗談のような言葉を聞いて顔を上げると、
けれど、許されたのだと言う安堵は次の瞬間に何かを考えるみたいに少しだけ動かされた
「ああ、でも、このまま全てを流してしまうのも、
そう言った
本人が自覚してるのかどうかはわからないけれど、捕まえた
「それは、どんな……」
不安を
「冒険……いや、
向けられている笑みと酷く
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