第15話 管理人形⑤
「おかえりなさい
学校から家に帰り、自室のクローゼットを開けるとクストスがそう言って
「じゃあ、ちょっと着替えるから、むこうを向いててね」
小さく
着替え終わってから、ポケットに財布と携帯端末を突っ込み、クストスに声をかける。
「クストス、もういいよ。それじゃあ行こうか」
銃を入れてある
もう少ししたら
そんな事を思いながら
「なんだ。ちゃん準備してるじゃん。心変わりしちゃうといけないと思って
「……あ、ああ、うん」
答えながら思わず取っ手を引いたのに閉まる
「ちょっと、なんで閉めようとしてるの?」
信じられないが扉を閉めることを
「はい、私の勝ちー。って……誰?」
「なっ、何が?」
「私はクストスです。あなたは?」
僕が痛みを
「クストス……ちゃん?……私は、
「はじめまして
クストスの再びの問いかけに、
「……友達……かな、……うん」
僕が気付かなかっただけで確かだった関係は、
「クストスちゃんは、
「
「……かんり、しゃ?」
その
「
「助けたいって連れ出した?もしかして無理やり?」
「正当な手続きを
「……へぇ」
頭の中が混乱で満たされたのか
実際、僕の頭部を
「待っ、て」
残った息を使い切って出した声は無視された。
「
「違うよ。友達だから。ちょっと遊んでるだけ、そこ通るから、
クストスの問いかけに
その様子を玄関の
「ごめんね、少しだけ待っててね」
「説明して」
低く
「クストスは、人間じゃなくて人形なんだ。でも危険な人形じゃなっ……」
正直に
「嘘でも、もっとマシなのが聞きたかった」
「……本、当の……」
「
そう言いながら
「それはダメだ。そんなことをしたら」
「
ほとんど叫ぶように僕の言葉を
「もう遅いかもしれないけど、それでも今ならまだ軽い罪で
「……あの、最後にクストスに説明をさせて……ください」
「頼むクストス、
「わかりました」
「ほら、
「ちょっと、なにやって」
クストスを止めようとした
「……え?」
「ね?……でも大丈夫。クストスは危険な人形じゃないんだ。たぶん大戦より前の規則で動いてるから」
安心させたくてそう言ったけど
これは駄目だ。誤解を解くためには仕方がなかったとはいえ、別の問題を発生させてしまった。
「その、安心して、クストスは本当に安全なんだよ。人に危害を加える気はないんだ。だから」
「……凄い」
急いで取り
「
「そうです」
「じゃあ、これは?」
「
「ほっぺとか、ちょっと
「いいですよ」
「うわ、ちょっと
「あの
「え?だって安全なんでしょ?」
ようやく口を
「まぁ、そうなんだけど……」
「それより、もっと早く言ってくれればよかったのに、
「……言ったよ」
「ああ……そうだね。ごめん。ごめん。ちょっと早とちりしちゃった」
「それで?なんで、こんな
「それは、その……
「ああ、考え事ってこの子の事?なんか一緒に出かけようとしてたよね?図書館に連れてくるつもりじゃなかっただろうし」
「そう、そうなんだ。クストスを見つけた時に天井からクチナワの
何があったのかを思いつく限り簡単にまとめて口にした。何も間違っていないのに非現実的すぎて自分で言っていて
「あー、うん、とりあえずちょっと座って、もっと詳しく、クストスからも事情を聞きたい」
「なるほど分かった。完全に理解した」
どうやらクストスの説明によって
「つまり問題は
「いや……それは、ちょっと……」
「信用できない?」
「
その言葉に嘘は無かった。
「でも、
もしも僕が知らない技術を
そして今まで誰も見つけた事が無いような人形であるクストスを、単純に直すだけで済ませてくれる気がしない。
「もしかしたら実験体にされてしまうかもしれないし、間違いなく拘束される気がする」
「うーん、それはあるかもね。でもだからって
「それでも今度こそ助けたいんだよ」
僕の言葉に口を
「協力してくれなくてもいい。ただ、黙っていて欲しい」
「ねぇ、クストス。この銃は管理者にしか使えないの?」
「いいえ、人間なら誰でも使う事ができます」
「それなら、もしも、クストスを危険な人形だと判断したら私が壊す。それが条件」
「……ごめん」
これまで何度こうやって
「それなら、
クストスが上着をたくし上げ、それからズボンを押し下げた。
「予備の対人形拳銃です。この銃は弾数に限りがあり撃ち尽くしてしまったら再装填する必要がありますが」
「いや、ちょっと待って」
突然
「なんで下着
「それは……最初から
小声で
「ああ、わかった。もう何も言わなくていい。大丈夫」
そう言って銃を受け取り立ち上がった
「何してるの?早く行こう。クストスを助けるんでしょ?ついでに下着も買いに行かなきゃね」
その言葉に頷いて立ち上がる。自分の銃を鞄にしまい、クストスに
「ところで、クストスっていうのは
「クストスと言うのは型式名です」
玄関に向かいながら口にされた
「じゃあ私が名前を決めてもいい?」
「管理者である
クストスと
「クストスがそれでいいならいいんじゃないかな」
同意すると
「じゃあ、クスィ。クスィね」
それは名前というより
「それでいいですか?」
「僕は別に
他に案が有るわけでもないし、確かに、クストスよりは見た目に合っているような気がする。
「では、今から私はクスィです」
クスィと名付けられたクストスはそれを確認するみたいにそう口にした。
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