第35話 人殺し②
車の中は
「どう言えばいいのか良くわからない」
「……きっと怒らないといけないんだけど。そうしようと思ってたんだけど。でも顔を見たらそんな気がなくなっちゃった。安心したっていうのもあるし、負い目を感じているって分かったから。
「聞いてはいけないと言われたから何があったのかは聞かない。でも私は
胸が
「……ごめんなさい」
「だから、謝らなくてもいいんだって」
「……僕は人殺し、でした。……
ずっと
「そうか……全部思い出しちゃったんだ……」
返ってきたのが
「ごめんなさい。今まであなたに嘘をついてた。記憶を失っていることも、何があったのかも私は知ってた」
僕の口は
「状況から考えて
自分の足元が崩壊していくような感覚。マフラーの温もりが、その匂いが、何か別のものに変わってしまった気がした。
「……仕事だったから?」
「それは違う」
叫ぶように否定した岬さんの声。その顔が
「……信じてもらえないかもしれないけれど。あなたと過ごした私は嘘じゃない。本当にあなたを大切に思っている」
それに何もかも無くなってしまったような気がしても
僕がクスィを助けようとしたのが最初は母さんの代わりだったからだとしても、途中からはそうじゃなくなっていたように、始まりがどうであったとしても、今、身体を包んでいるマフラーの温もりと匂いは、母さんと同じで、でもそうだからじゃない安心感を確かに僕に与えている。
何も言えないでいる内に信号が変わって車はゆっくりと走り出し、
やがて見知った通りに出て、
「良かった」
耳元で
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