第7話 鑑定式が始まるよー


 兄上がオロオロと私に話しかけようとしているのを知らんぷりしながら待っていると神官らしき者たちが前の方に集まり始めた


 そろそろ始まるのだろうか?(クソ)王子を囲んでいた子どもたちも名残惜しそうにしながらも自分の爵位にあった位置の長椅子に座っていく


「静粛にこれより鑑定式を始める」


「まずは司祭のサークレー様より神話の朗読をしていただく」


 そう言うとサークレーが小さめの本を持って出てきて一礼をする


「本日はお日柄もよいのできっと女神様に見守られているのでしょう。それでは今から皆様も知っておられる神話の絵本の朗読をさせていただきます」


 ちなみに私は読んだことがない。神なんて皆同じだろうと思って神のことを知る必要性を感じなかったからだ


「あるところに一人の神様がいましたですが神様は一人っきりで寂しくなって人を作られました。ですが、人は神のいる世界には耐えきれなかったので神は人の世界を作られました。」


 一人の神が泣いている絵とその神が人の前で手を掲げている絵が書かれているそしてページをめくる


「神は疲れてしまって少し休むことにしましたですがその間に人は増えて憎悪を知りたくさんの憎悪で魔獣や魔物そして魔人が産まれましたそして神様が目を覚ました時には人は皆絶える寸前でした」


 神が寝ている絵とたくさんの人の上に黒い霧そしてその中にウルフのようなものゴブリンのようなものそして人形の何かが書かれている絵そして人の死体とたくさんの魔物たちそれから逃げ惑う人が書かれている絵が見えるまたページをめくる


「神は慌てて人々に力を与えました。それは魔法とスキルという力でした。人々はそれらを使い魔物たちを退けました」


 人に光を降り注ぐ神の絵と光を纏った人が魔物たちを倒す絵が書かれているページをめくった


「神は魔物たちを閉じ込める檻を作りました。人々はそれをダンジョンと呼びます。そして人々はダンジョンで魔物を狩り安全を保ちながらまた数を増やしました。そして人々は感謝の証として各所に神殿を作りその神を祀りました」


 神が建物に黒いものを閉じ込めてそれに人々が入って魔物を狩る絵そして今いるような神殿の像に祈りを捧げる絵が書かれているそしてもったいぶるようにページをめくった


「それが創造神である女神イル・クレアトーレです」


 そしてあの神の像と同じ顔をした女神が手を広げ微笑みを浮かべている姿が描かれているそして絵本を閉じた


「それでは女神様の洗礼を受けた後鑑定盤に手をのせて鑑定してもらいます。ではまずは男爵家から……」


 そう言われて男爵家の子供だろう子たちが進み出て女神の像の前に祈りを捧げるすると薄くだけどキラキラとした光が降り注ぐ


 それを何人か繰り返すとある一人の女の子が祈ると盛大にキラキラとした光が降り注いだ


 すると神官がその女の子を鑑定盤に進ませて手を触れてくださいと言った


 女の子が鑑定盤に触れると私がいつも見ているステータスの大きいバージョンみたいなのがデカデカと表示された


ステータス

名前 ラン

レベル1


職業 聖女


適正 光、聖


魔力量 小


スキル 魔法の心得レベル1 魔力回復レベル1 


称号 聖女


加護 イル・クレアトーレの加護(小)


 そう表示されたえっ魔力量も表示されるの!?

そうだ!ほんのちょびっとだけの魔力を体にまとわせてそれを鑑定させればいいじゃんそうしよう!


 そんなことを考えているとなんだか周りがざわざわしていた


ボソッ「聖女ですって!」


ボソッ「らしいな」


ボソッ「今日は本当に稀な日かもしれないな!」


 聖女は良いもののようだ一応兄上にも聞いてみよう


「あにうえせーじょってすごいの?」


「うん。すごいんだよ昔に勇者様と一緒に魔王を倒したらしいんだ」


「へぇー」


 魔王という存在がいるらしい


 すべての男爵家が女神の像に祈り終えるとランとかいう子と同じように鑑定盤に手を触れていったけど職業がなしという子もいた


 その時は皆に笑われていたからあとから職業を手に入れることはできないのだろう


 そして子爵家が終わり伯爵家の順番になった


 ちなみにだけど準男爵と騎士爵は人数が多すぎるし他の貴族がうるさいから別の日にやるらしい


 伯爵家でも我が家は上の方というか公爵家と同じくらいの権力を持っているから最後の方になるそして兄上が先に受けることになっているらしい


 そして私達の順番になる兄上が先に像に祈りを捧げるとあのランとかいう子と同じように強い光がキラキラと輝き兄上を照らした


 近くにいた私を押し退けて神官が兄上の手を力強く掴んで引っ張った


 兄上の痛っという声を聞いた直後私の表情がこそげ落ちる


 私に当たったのも兄上を無理やり連れて行くのも父が死神伯爵という称号を持っているのと関係があるのだろう……だけどねぇ


 バシッ


「なっ何をする!!」


「だってあにうえのてがいたいたいしてるからそんなひどいことをするわるいひとを……ふふっどうなっちゃうんだろうねぇ?」


「ヒィッばっバケモノ!ホントはこんなやつ触りたくないに決まってるだろうが!こんな血にまみれた王家の犬の子供に!私が汚れるじゃないか!」


 クスクス


「なっなんだ!?」


「みーんなこんなはんのうばーっかり!しんでんのまえのきしさんもいってたしあにうえのおててにけがはさせるし……みんなみんな……ふふっ」


 ちなみにあの神官さんには心の中で思っていることを話しちゃう魔法をかけちゃいました!


 みんなみんな等しく無価値家族以外みんな無価値!


 あぁ早く私のたった一人の主人に出逢いたい!


 こんな無価値な連中じゃなく私を心底惚れさせてくれるたった一人の人が!


 私が狂わないうちに私を見つけて?私もあなたを見つけるから、ね?

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