第49話 オハナシ


 愉しみだなぁと思ってニヤニヤと見ていたら兄上がこちらを見てきた


 と思うと兄上はパッと父上から手を離して私に近づいてきた


 あ~もっと父上が成敗されてる様子が見たかったのに


「シャルはこんなものは見なくていいんだよ?だからそのスライムとでも遊んでるといいよ」


 あ~私に黒い姿を見せたくないと……そういうことか……まぁ第三の目で見ればいいし素直に従っておくか


「はーい……」


 怪しまれないようにちょっとふてぐされておく。そうしたらまさか見られてるなんて思わないでしょ


 そう言って、二人から離れてクレールを抱っこして泉に近づく


 そういえばスライムって水を取り込んで大きくなるって聞いたけど、ホントなのかな?


「ねぇクレール」


 "ん?なあに?シャル"


 泉のほとりに座ってクレールを膝に乗せる


「スライムって水を取り込むと大きくなるの?」


 そう聞くとクレールは難しげな悩むような声をだした


 "ん~……食事として魔力が含まれている水を欲しいだけ取り込むことはあるけど、大きくなるほど取り込んだときの情報はないからわかんないなちょっと浅いところに入ってみるね"


 そう言うとクレールは私の膝から降りて少し離れたところで泉に飛び込んだ


 バッシャン!と大きな水しぶきが上がる


 でも私にはかからない。考えてくれたんだろうな~紳士ってこういうことを言うんだろうな


 それに引き換え父上は……はぁ……


 という憂いの表情をしながら第三の目心眼で父上と兄上の喧嘩……兄上の説教?を見ることにした


「なんだろう今さっきの水しぶきは?」


「そんなことはどうでもいいです。僕から逃げようとしたところで無駄ですよ?」


 父上は露骨に顔を背け苦し紛れになんのことかな?と言う


「……」


 それをジトッとした目で兄上が見つめる


「あー!もう!悪かったって!私はレンが実験台になってくれればいいなと思って何も言わずにスライムに近づいて行くのを見守っていました!すいませんでした!」


 父上が清く謝るのを見ても兄上は腕組みをして御立腹のご様子だった


「すいませんでしたで済むのなら衛兵や教会は必要ありません!」


 おおーまたベタな言葉で警察や裁判所みたいな感じかな?確かに教会で神の声を聞くとか言ったりするものね


 ギロっとした目で父上のことを指さしてガミガミと叱りつける様子は親子の関係が反対であるかのように思われた


 私がいるからか殴り合いまではしないようだが、そうだとしても十分なほどに黒い顔と辛辣な言葉をかけている


「父上は本当に貴族の家の当主ですか?そのプライドの無さは何なのですか?」


「プライドはあるよ!」


「どんな?」


「へ?」


「だからどんなプライドがあるのですかと聞いているのです。馬鹿なことは言わないでくださいよ?」


 父上は少しの間考え込むかのように腕を組むと突然バッとにこやかな表情で顔を上げると


「家族を幸せにすることかな」


 少し照れたような表情で言って頬をかく父上に兄上はうろたえるように顔を赤く染めな、な、なっと意味のない言葉を出し続け漸く落ち着いたのか赤い顔のままでどもりながら言う


 ……照れてるなニヨニヨ


「そ、それは馬鹿なことではないですか!父上のプライドはそんなものなんですか?」


「そんなものじゃないさ」


 父上は真面目な顔で続ける


「私にとってはそれこそが一番大切なものなんだ。ハニー、シャルそしてレン。君も私の大切な家族なんだ。僕は家族が傷つけられたなら例え伯爵位を取られても反撃して同じだけの傷を負わせたい」


 まあ、その前に攻撃されないように予防線を張っておくけどね


 そんなふうに言う父上は私から見てもかっこいいなと思ってしまった


 案の定兄上はもっと顔を赤くしてそっぽを向く


「そ、そんなことしたらいけないとわかっているのになんでするんですか……」


 小さな声でいったことにも父上は反応していった


「それはお前たちのことを一番大切にしているからだよ。だから……」


 一度父上は言いよどむ


「だから?」


「…………」


 ああ、この流れはアレだよね~父上どんまい☆


「許して?」


 父上はテヘペロしながら言った


「「…………」」


 兄上と母上の無言の「えっ何このひといってんの?意味分かんないんですけど?」という圧力に父上は段々と汗をかいていく


 そして


「すいませんでした!いい感じにして終わらせられないかなって思っちゃいました!すいませんでした!」


 またもや父上の謝罪を叫ぶ声が聞こえる


 プッ今度こそは許されないだろうから……ザマァ!(笑)


 母上が鞭をビダンビタンと打ち付けながら父上に近付いていく


「ねぇクロ……何かいうこと……あるわよね?」


「で、できるだけや、優しくしてください」


「私はそんなことを聞いているんじゃないのよ!息子のいたいけな純粋な心を利用しようとしてお叱りを免除してもらおうなんて思って!」


 バシッと父上のそばの地面を鞭が叩く


 ヒッと父上が声を上げる


「今日は満足に寝れると思わないことね」


 あー一つ説明するために言っておくと、母上は鞭で打たれたところが痛すぎて夜満足に寝れると思わないことねって言ってるという意味です


「ごめんなさい~!」


 ダンジョン中にムチのビシッとなる音がこだましたとさ


 ちゃんちゃん

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