第34話 私はマザコン!


 これがダンジョンなのか……!と心を弾ませて辺りを見る


 とても洞窟の中にあるとは思えない。洞窟の先に広い草むらがあるのではと疑いたくなるが太陽の位置が違うから疑いたくても疑えない


「言っておくけど他のダンジョンすべてがこんなふうというわけではないからね?迷宮形式という迷路のようになったダンジョンもあるよ」


 聞いてみると古くからあるゲームの中のダンジョンと似たようなダンジョンもあるらしい


「どっちが多いということもないけどどちらにも慣れていかなければいけないからね……頑張ろうね」


「……はい」


 きっと私は古き良きダンジョンにはあまり興味を示さないだろうと思われているようだ


 ……実際そうなんだけどね


「それじゃああなたとレンは先に刈ってきなさい。私とシャルはスライムを探してくるから」


「「えっ!?」」


 父上と兄上はこちらを驚愕の目で見てきた


 なんでそんな驚いた目で見るんだろう?だって……


「訓練や武器選びのときも私とシャルだったでしょう?それにシャルはスライムをテイムしたいのよね?」


「はい!」


 スライムちゃんに人をだめにするイスになってもらうのとスライムの粘液が出るだろうから(ゲーム内知識)それを無毒化してから食べてみないと!


「あなたにはテイムの仕方がわからないでしょう?変なこと教えられても困りますから」


「そ、それじゃあ僕はついてっちゃだめですかね?」


 意外なことに兄上が粘る……それだけ生き物の命を奪うのが怖いのだろうか


 お前も怖いって言ってたじゃないかっていう質問には答えません!だって……自分でも怖いのかよくわからないから


 それに気づいたらいや、気づかれたらきっとヒトというものはきっと恐れて害そうとするでしょうからね


 なんか母上みたいな言葉使いになっちゃったけどその問題は置いといて、兄上に母上はなんて返すんだろう?


 そう思ってたら母上が兄上に近づいていって耳元でコソコソ話そうとするので聴覚を強化した


 身体強化の応用だけど意外と拾う音を決めたりしないとうるさかったりするから意外と繊細な仕事が必要なんだよね


 まぁ並列思考の一つに任せてるからいいけど


 そういえば並列思考を百個もあったら何に使うんだよってなるよね?それは魔法の理論を考えていたり心眼を使って他のものを観察したり辺りを警戒したりしてるよ


 乗っ取られたりしないのって気になるかもだけど言ってみれば一つ一つの並列思考はAIというより子機のコンピュータに近いからね


 主人格としている私がマザーコンピュータで、色々な情報を子機で処理して理解できた情報をマザーに返してもらってまた命令といった感じ


 色々と試行錯誤をして自動的に情報を受け取れるようにしたり自動的に命令を下せるようにプログラミングに近いこともしてるよ


 ってそんなことはどうでもいいか……母上は何を話すんだろう


「シャルよりも先に慣れておかなくていいの?多少顔が青い状態だとしても心配してくれたら頼りになるって思ってもらえるわよ?」


 母上がそう言うと兄上は青い顔だけどこちらを見るのでコテンと首をかしげておいた


 すると兄上は戦地へ自爆攻撃をしにいく兵士のような顔をすると母上の方を向いた


「僕が間違ってました。僕は先に父上と魔物を猟ってきます」


 無駄にきりりとした顔をするものだと思いながら見つめる


 それだけ生き物殺しをするのは勇気がいるということだろう


 私もある意味では怖いけどね


「よろしい、それではクロもよろしくね」


「わ、分かった」


 父上と兄上は森の方へと歩みを進めていった


「それじゃあスライムを見つけてテイムしていきましょうか?」


「はい!」


 そう返事すると母上は微笑ましいものを見るような目でこちらを見てくる


「何故母上は私を微笑ましく見ているのですか?」


「あら、気づいちゃった?そうね……」


 にっこり微笑むとこちらを見つめる


「私も昔はスライムをたくさんテイムしたわねと思い返してね懐かしくなったのよ」


「母上はたくさんスライムをテイムしたのですか?」


「ええ、スライムを一匹だけテイムしてね……スライムが分裂したからその子もとしていったらすごくたくさんのスライムが家にいることになって最初の子以外はそのとき逃したわ」


 若気の至りねと続ける


「逃してもいいんですか?」


 外に逃したのかというつもりで尋ねる


「ああ、ダンジョンに行って逃したわよ?」


 ちゃんと意味を理解して返してくる


 母上はエスパーだろうか?


「そういえば母上の魔物たちはどこにいるのですか?」


「ああ、それなら……出てきてらっしゃいあーくん」


 あーくんとはと思いながら見ていると母上の影からスライムが出てきた。水色のおまんじゅう型である


「シャル、スライムのあーくんよ」


 母上がそう言うとあーくんは縦に一瞬少し伸びた


 スライムは知能が高いのだろうか?それとも母上のが特別?


「あーくんは私の最初の子だから長い間意思疎通をしてきたから少しだけ言葉がわかるけど普通のスライムは私達を見かけると飛び跳ねてぶつかって来るだけよ」


 やっぱり長い付き合いで知能が高まったのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る