第41話 駄王ピンチ!
「それでは!」
急に声がしたから一瞬ビクッと反応したけどすぐに妖精王の声だと気づき警戒心を下げる。ゼロにはしないけど
「デルさんには……」
「……あ゛?」
こいつなんて言った?
「な、なんですか?」
「あんたに呼ばれる名前じゃないっての。その名前を読んでいいのはトーレ以外では主様御一人だっての。何勝手に人の名前呼んでんの?」
こいつ殺されたいのかな?殺されたいから名乗りもしてないのに勝手に名前呼んでんの?
「あー名乗らなくていいよ駄王。あっ駄王ってあだ名はね~無駄なことしてくれるよなおい?っていう意味を込めて駄王にしたんだ~。気に入ってくれるよね?」
そう言うと駄王は顔を真っ赤にして増悪に満ちた表情になった
「言わせておけば侮るようなことを言ってくださいますね?あなたなんて私が本気を出さなくても消すことのできる矮小な存在なのですよ?」
ふうん?だったら
「試してみる?」
そんなことできるはずないけどね?
「貴様!」
どうせ精霊に頼る形でしか魔素を集めてられないのだからこの妖精界のすべての魔素を私の支配下に置けばいいよねどうせなら精霊も
うーん……魔法ではないけど技として使えそう。それに今は無理だと思うけど人の魔力も支配できそう。取り敢えずやってみるかな
「支配」
……うん。私の支配下に置けた。これでアイツは使えないただの弱い存在だ
「支配?なんですかそれは?ああ、私を支配して使役しようとしたのですね?無駄なことを!精霊よ!」
シーン
「な、何故?精霊!精霊よ!」
『ふふっ無駄なことをする。確かに妖精王は駄王ね。でもデル、その全部の魔素を取り込んじゃ駄目よ?せめて半分にしなさい?』
えっ!取り込んでもいいの?ラッキーそれじゃあ魔素の半分は私のもの!
「な、何?魔素が急激に減っている?まさか!おい人間!魔素を吸うのをやめろ!」
やだね、こんな高揚感たっぷりに浸れるのをやめにするはずないじゃない……っと半分か。もっと吸いたかったな~
「えっ花が枯れてる、世界を維持できる限界まで魔素を吸ったの?そんなの魔素酔いを起こして倒れるのに倒れてない……この人間は何者?」
あらら、ホントだ花が枯れていく……緑で溢れていた春の世界が冬に変わっちゃったみたい
『ふふっ私の作った存在が自然に発生して偉そうにしてたあなたに負けるはずないじゃない。負けたときのために譲歩していたけど必要なさそうね』
あら?私のために仲良く見えたけど表面上の付き合いだったみたい。これから妖精王はこの世界の魔素を戻していかなきゃだしきっとトーレの奴隷のような存在になるからずっと働き詰めだね~おつー
「クソが……クソがクソがクソが!何お前は偉そうにしてんだよ!?ただ神に生まれただけのくせに何でお前は偉そうにしてんだよ!」
あ~あ。そんなこと言っちゃ駄目なのに……ふふっまぁ人の不幸は蜜の味だから、楽しませてもらおうかな?ふふふ
『だってここは私のおもちゃ箱なんだもの。好きに使っていいし好きに壊していい。それこそあなただって妖精王に生まれただけのくせに偉そうにしてるわけ?』
「は?あんたに分かるわけないでしょ?私は必死に努力して認められたのよ!あんたなんかとは違うのよ!」
『はぁ……何故あなただけが努力してると思ってるのかしら?私だって努力してこの立場まで積み上げて来たのよ?
それにあなたは妖精王としての才能だってあったのに何も才能もなく頑張ってこの立場になりましたとでも言いたげな顔してるわけ?十分恵まれてるじゃない』
おお、論破!妖精王は悔しそうに歯ぎしりしてる
ここで癇癪を起こして自棄になって殺しにかかるとか定番だけどどうだろうね?
「黙れえぇええ!」
魔力を爆発させようとしている……何がしたいんだろう?
「これでお前ら消し飛んじまえよ!」
ドカーンという音とともにすごい爆風が起こりあたりが見えなくなる
「ふふっこれで邪魔な神とその使徒を排除できた!ハハッ呆気ないなぁ~!」
『残念だけど死んでないわよ?』
「なっ!?」
私に魔力の支配で負けているのにそんなお粗末な魔法で神を消せるとでも思ったのだろうか?
「使徒まで!?何故?私の魔力の殆どを使ったんだ。この世界にいるうちは魔法の影響を受けるはずなのになぜ?」
なるほど何でトーレの神界じゃなくて妖精界なんだろうと思ってた。妖精王だから神界に行けないからだと思ってたけどホントはトーレを消すためだったんだろう
神界はいわばトーレが絶対の場所なんだから相手の魔法が効かないとかあり得るからね
もしかして発動もできなかったから諦めて妖精界に来るのを虎視眈々と狙っていたのかも
そうだとしたらトーレはきっと魔法を発動しようとしていたことに気づいていただろうし駄王は発動してないから気づかれてないとでも思ってそう
『だからここは私のおもちゃ箱なのだからおもちゃより遊ぶ存在のほうが強いに決まってるじゃないの』
トーレがそう言うと駄王は顔を真っ青にして懇願を始めた
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