第39話 トーレと……女神さま?


 ………………

 …………

 ……


『……ル?』


 ……何か聞こえる?


 眠い……


『デ……?』


 うるさいな……


『……デル!』


 うん?……トーレ?


 目を開けると大きな木とトーレの覗き込んてくる顔が見えた


『よかったわ。起きたのね』


 ホッとした顔をして覗き込む体勢から体を起こして片手を差し出してくる


『さっさと起きなさい。説明してあげる』


 少し混乱した頭で思考を巡らせようとするけど並列思考がないことに気づく。それも話してくれるのだろうか?


『早く!』


 そう言われとっさにトーレの手を掴む


「きゃっ」


 そうすると強い力で手を引かれて声が出る


「きれい……」


 そこには想像を絶するような光景が広がっていた青白く輝く大きな樹


 私は花畑にいたらしく周りにはカラフルな花が咲いていて想像通りの妖精があちらこちらを飛び回りうふふと笑い合う声が聞こえる


『どう?すごいでしょ?』


「ここは天界?」


 思わずそうつぶやくほど美しいところで惚れ惚れする


『ふふっそれが違うんだなぁ~』


 普段なら苛つくようなトーレの物言いもどうでも良くなる


『フフンここはね……』


「妖精界ですよ」


 声が聞こえた方をパッと振り向くと美しいこれこそ女神さまっていう姿をした女性がいた


「ふふっ女神ではないですよ」


 思わず声が出てしまっていたらしい。それにしても声もきれいだな~


『ちょっと待ちなさいよ!私が説明したかったのに!それに私が女神よ!』


 ……前言撤回、トーレ、マジ苛つく


「ふふっ主神様、可愛らしい子ですね……それなのにこの子が精霊を取り込んだって本当ですか?」


 最初の雰囲気から一転緊張感漂う雰囲気になった。真面目な顔をしている。声からも緊迫した雰囲気を感じる


『うん。そうだよデルは精霊を取り込んだ。だから種族が曖昧になった。今あなたの体は作り変わっているそのことに全力を注いでいて並列思考なんかが使えなくなってるはず』


 種族が曖昧に?それと並列思考の使えない理由はそれか


「本当なら精霊になる……というより取り込まれて精霊になっているはずですがあなたが取り込んでしまったので問題になっているというところです」


 ふうん……種族が曖昧にってどんな種族になるのかな?


『本来は人間は進化するとハイヒューマンになっていたの』


「えっ進化?」


『ええ、でも最近は50レベルが最大と思われていたように進化をするものがいなくなっていて種族として衰退してたんだ。そこであなたにはそのハイヒューマンになってほしかったんだけど種族が曖昧になっちゃったからねぇ』


 なるほど何かあったのかな?


「そこで私はあなたに妖精になってもらいたいのです」


 ……えっ!


「戸惑う気持ちはわかります。ですが精霊の情報を処理仕切ったあなたは精霊魔法の使い方がわかっているはずです。その情報を知ったあなたを人間にしておくわけにはいきません」


 うん。確かにそうだよね。精霊魔法は少ない魔力で莫大な魔素を集めたり強力な魔法を使えるもんね


 でもそのままにしておくことができないではなくて人間にしておくわけにはいかないというのはどういう意味だろう?妖精だったらいいの?


「実はここ数百年は妖精が新たに誕生するほど精霊に力がついていないのです。精霊はたくさん誕生しているのですがね」


 精霊はたくさん誕生するけど妖精にクラスアップしていないということかな?でも……


「それは何か悪いことが起こるのですか?」


 そう聞くと女神さま(名前知らないから女神さま)は憂いの顔をして答えた


「精霊と妖精の関係が崩れる可能性があります。そもそも精霊は妖精にたくさん使われて力の入れ方や妖精の感情を学んで妖精になるのです」


 使われてって下に見ているね


「そして同じように妖精も精霊の無表情を見て何も考えずにいた方が楽なのではないかと感じて精霊に戻ってしまいます」


 あーでもそれだったらもっと前に妖精は絶滅しているんじゃないの?妖精が精霊よりも少なかったならだけど


「確かに昔も妖精の割合は精霊に比べれば少なかったですが妖精もそれなりにいて妖精同士で遊んでいたのです」


 遊んで感情を活性化させていたのか


「精霊が増えて仕事を与える仕事をして遊んでいなかったため、感情が薄くなって妖精が減り、精霊が増えているのです」


 つまり悪循環が続いているということね


「そこであなたです」


 私?何をさせようっての?妖精にさせるとか言ってたけどまぁ私的にはいいんだけど


「あなたは精霊を吸収し、処理できる脳を持っている。ですから精霊を吸収して最終的には私の後継者になってほしいのです」


 後継者?


『ダメダメダメ!この子には好きに生きてもらうかわりに来てもらったんだから妖精王の仕事なんてできるはずないじゃない』


 この女神さまは妖精王だったんだ


 っていうか仕事をさせようとしてたの?


 うわぁ~うっざ駄王の称号をあげるよ


「ということらしいのであなたには新たな種族ヒュアリーになって頂こうと思います」


 ヒュアリー?

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