第22話 胸は押しつぶせばいいし……男として生きたいです


「そんなことできるの?」


「確認ですが結婚の申込みは断ればいいのかと聞かれませんでしたか?」


「うん。聞かれたよ」


「では、旦那さまはお嬢様にもう女性としての責務を負わせる気はないのでしょう。最初からなかったでしょうか、よりいっそうその気持ちが強くなられたと思います」


 ふむふむたしかに父上はいわゆる貴族としての女性の生き方をさせようとはしてなかったからね


「そしてお嬢様は男性として生きたいと思われている……それなら女性として縛る必要はないのではないかと思われるのではないでしょうか?」


 確かにねぇ


「ですが、お嬢様はもう女性としてお披露目してしまいました。ですから一時期だけ執事の私の養子として名前を変えて執事養成学校に通うのはいかがかと」


 確かにそれだったら行けるかな?


「セバスはいいの?」


 養子を迎えるってことはもう結婚はしないとも取れるから女性が離れていくんじゃないかな?


「ふふっ私はフェリス一筋でございます。他の女性なんて抱くこともしてきませんでした」


「セバス……私もあなた以外の人に抱かれたことはないわ、また一緒になりたいわ」


「フェリス……」


 二人の世界になっちゃった


 おもんない……


「はぁ……父上たちに話してこようかな」


 私はその場を後にして父上たちのもとに戻った


 玄関に戻ると父上たちが何か話して待っていたが、私の気配を察知したのかこちらを父上が向いた


「やぁシャル。セバスたちはどうしたのかな?」


「セバスたちは二人の世界に行っちゃったからおいてきたんです」


「二人の世界に……セバスにもそんなことがあるんだね……」


 父上は感慨深そうにうなずいた


「それで何か用が有って来たんだろう?」


 父上でもわかるか


「私をセバスの養子にしてください」


「……へ?」


 父上が固まった


「……何か不満があったのかしら?」


 母上も心なしか警戒したような態度だ


「私は男として執事になりたいです。主様が女性でも男性として仕えるつもりです。ですが、この家の娘として私はお披露目されています」


 そう言うと一度切る


「別に母上や父上が嫌いと言うわけではありません。……私は弱いです。だからそのための武器として男性というステータスが欲しいのです」


 そう言うと父上と母上を見据える


「私の体のことは父上と母上の性ではありません。神がきっと間違えてしまったんです。だからといって男性の意識が宿っているという訳ではないですから安心してください」


 父上はこちらを向いて真剣な眼差しを向けてくる


「女執事として女性に仕えるという未来もあるんだよ?それなのに男の執事として力の弱い、体力のなく、小さい男として生きていく気があるのかい?」


 それは想定していたことだ


「私には魔法があります」


「魔力を吸い取って魔法を使えなくする魔導具もあるんだよ?その時魔法をつかえないから無理ですなんて許して貰えないよ?」


「それでは魔力の容量を上げるのと体力をつけるためにトレーニングをしましょう。レベルアップだけでは体の動きに頭がついていかないかもしれませんからね」


「女性のトレーニングと男性のトレーニングは違うんだよ?女性のものより厳しいんだよ?それは男性という頑丈な体があるからこそできることなんだよ?」


「女性でも男性と同レベルのトレーニングをこなす人だっています。だから男性のトレーニングを頑張ります。そのために最初は体作りとしてレベルアップをさせて貰わなければいけないかもしれませんが」


「ふふっただ頑張りますと言われたら断れるのにレベルアップをさせて貰わなければいけないと自ら認められてはね……」


 父上は苦笑しこちらを見据える


「セバスに許可はもらっているんだね?」


「はい」


「セバスに養子にやったとしても学校にはうちの子として通ってもらうからね?」


「もちろんです」


 ふふっと父上は笑い私の頭を撫でる


「まだまだ小さいのに自分の未来を決めてもいいのかわからないけどシャルがそれで幸せになれると思うなら反対はできないね……セバスに養子縁組をさせよう」


 その書類も用意して貰わないとね


 父上はそう言うと裏庭の方に歩いていく


「まだイチャイチャしているのなら仕事中だと言って仕事をさせようかなハニーたちは冒険者ギルドに行く準備をしておいてくれるかい?」


「えぇ、わかったわ。……二人ともついていらっしゃい」


 母上はそう言うと私達とメイドと執事数人を連れて歩き出した


 兄上がこそっと声をかけてくる


「僕が嫌だってわけじゃないんだよね?」


 この時期の子供はこういうのに敏感だからね


「私は家族みんなが大切なの。そんなこと言わないでよ。ね?」


「でも、会えなくなっちゃうんじゃないの?」


「そんなことはないと思うわ。セバスの息子としてうちに見習い執事として来ることになっているとなると思うわ」


 母上が会話にしれっと参加してくる


「それじゃあこれからも僕の隣の部屋?」


 そうなのだ私の部屋は兄上の部屋の隣なのだ……なぜだろうか?


「えぇ、うちの情報は外部に漏れませんものきっと学校と勉強以外はいつも通りの生活ができるわ」


「シャルは学校で僕は勉強?」


「えぇ、シャルはレンの習うことを学校で習うから一緒のことをするの」


「一緒のこと……えへへ」


 兄上は嬉しそうに頬を緩ませている


 母上は兄上の扱いが上手いようだ

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